たたかいの現場から

960号

茨城
  ブラックオーナーから職場守れとスト権確立

 スガノ農機株式会社は、茨城県に本社工場を構える創業100年の農機メーカーだ。同社は、優れた技術を継承し、全国に営業所を配置し、150余名の労働者が働いている。
 しかし、創業家4代目で前代すがのみつや表取締役社長であった菅野充八取締役は、悪質なパワーハラスメントやセクシャルハラスメントを繰り返し、気に入らない労働者を数多く退職に追い込んできた。こうした事情もあり、本年2月4日付でもって菅野氏は代表取締役を解任された。


 しかし、菅野氏は、過半数株主であるとの主張のもとで、経営実績をあげている後任役員の不当解任や会社の私物化を謀った。そこで、管理職を含む、ほぼ全労働者が東京管理職ユニオンに加入し、スガノ農機労働組合支部を結成した。あわせて60余名の組合員が会社を守るために株主になった。

 組合は、会社の正常化を望み、団体交渉を4度申し入れたが、菅野氏は話し合いから逃げ続けている。


 このような不誠実な対応を受け、菅野氏のパワーハラスメントについては一部、刑事告訴を行った。菅野氏のパワーハラスメント、セクシャルハラスメントについては、近日中に民事の損害賠償請求訴訟を提起する予定だ。
 さらに私たちは、現在、ストライキ権を確立し、自らの責任で事業を維持し、昨年以上の増収増益を達成している。
 一方、菅野氏は、臨時株主総会を強行し、自らの意向を反映する取締役を選任したと称して、何と数千万円に及ぶ会社の預金を引き出したものの、使途を一切明らかにしていない。銀行や代理人弁護士も菅野氏による会社の私物化に加担している。このままでは、150余名の労働者の雇用と家族の生活が危機に瀕する。
 しかし、私たちは、決して屈することなく、団結を維持し、菅野氏の永久追放を勝ち取るまで、闘い抜く。

 

鈴木 剛(東京管理職ユニオン執行委員長)

 

教育
  森友問題も追及 全労協が文科省交渉

 7月3日全労協は、現在、加計学園問題で注目を浴びている文科省と交渉を行った。全労協文科省交渉は、例年この時期に開催されている。

 

 交渉の中で、地方公務員法改正に伴い、現在、特別職の非常勤扱いであるALT(Assistant English Teacher)が、2020年から会計年度の任用職員になることが判明した。文科省は、「これまで通り任用に変更はない」と回答したが、参加者からは不安の声が漏れた。
 総務省では現在実施に向けたマニュァル作りが進められている。
 「非常勤の労働条件を改善することが法改正の趣旨だと思う。それをふまえ、地方自治体がきちんと説明出来るようなマニュアルを準備して欲しい」と要求を伝えた。

 また、松野文科相並びに義家副文科相の、教育勅語容認発言の撤回を求めた。しかし文科省は発言の撤回は避け、教育基本法の趣旨に従うことを前提にしながらも、「校長・設置者の判断に任される」と回答。
 参加者からは、「この間、森友学園事件に関し、大阪府教育庁私学課と教育勅語の取扱いについて協議した。……文科省は、校長・設置者の判断と問題を文科省と切り離すが、現場では文科省の方針を根拠にしているのが現実」と伝えた。

 「大学や研究機関が軍事技術開発に協力する「軍学共同」体制を行わないこと」という要求に対しては、「各大学の自主的な判断に任される」と回答した。

 参加者から、「軍事研究助成は昨年度から18倍も増額された。大学が軍事研究に流れる背景には、国立大学の運営費交付金削減による研究費の減少という問題がある。」との指摘がなされた。


 最後は、この間の加計学園問題に関連し、「文科省は内閣府との関係においては頑張っていると聞いている。児童・生徒、そして現場の教職員のためにより良い文科行政を行って欲しい」と活を入れ、交渉は終了した。

 

大椿 裕子(大阪教育合同委員長)

 

静岡
  トヨタ下請の不二電子偽装請負是正させ団交

 静岡ふれあいユニオンKGU分会は今年5月27日、派遣先である不二電子工業(精工技研子会社)との第1回団体交渉を行った。不二電子はデンソーの下請企業として車載用デバイスを製造し、トヨタのレクサスとプリウスにも搭載されている。


 興和グローバルユニオン(KGU)は不二電子の静岡本社工場内でプラスチック成型のライン作業に従事する外国人労働者を中心に結成された。組合員は全員が、派遣元企業である興和産業に期間の定めのない直接雇用をされている。

 KGUに加入するメンバーは、ブラジル、アルゼンチン、モンゴル、中国、韓国、フィリピンそして日本の7ヵ国で構成されており、その名の通り「グローバル」だ。KGU結成以前の興和産業は社会保険も雇用保険も未加入で、労災は隠す、有給休暇を申請すれば即解雇など、やりたい放題の「ブラック企業」であった。不二電子との業務契約も「請負」として技能実習生を受け入れていた。


 2016年5月、静岡ふれあいユニオンでは、労働局職業安定部需給調整事業課に「公益通報」し、興和産業と不二電子には「請負」の実態はなく、労働者派遣法と技能実習制度を潜脱する目的でなされているから行政指導して是正させるべきだと伝えたところ、6月1日より両社間の契約は「派遣」となり、偽装請負は是正された。
 この変更に伴い、興和産業に在籍していた技能実習生は全員が不二電子へ転籍となった。そうすると、ユニオンに実習生が加入すれば直接の雇用関係にはない不二電子に対しても団体交渉権が行使できることになった。


 団交申し入れに対し不二電子と興和産業が警察を呼ぶなど団交開催までは難航したが、曲折を経て第1回団交となった。

 団交では実習生の賃金算出根拠が不明な点を追及し、「就業規則」「労働条件明示書」「36協定」をまずはユニオンへ交付すること、そして労働者派遣法で公表が義務化されている「マージン率」について興和産業と共に早急に実施すること、加えて安全衛生委員の活動にユニオンメンバーを参加させ、労災隠しの再発防止などを全社的に取り組むこと等々を了解事項として終了した。

 

鈴木 一男(静岡ふれあいユニオンKGU分会)

 

東京
  偽装請負撲滅など東電に申し入れ

 7月13日、全労協は2014年以来、主に労働者の労働条件、ピンハネ問題、偽装請負などを中心に継続してきた東京電力本社への第4回の申しれを行った。今回は労働相談を実施しているいわき自由労組、福島連帯労組からも参加しての協議となったことにより、労働相談から見えてくるピンハネの実態、偽装請負の実態も指摘しながらの話し合いとなった。


 2次下請のさらに下の3次、4次……で働く労働者は、雇用契約は2次下請との契約になっていながら賃金は雇われている下請から受け取っている実態、労基署に相談すれば雇い主は賃金を受け取っている会社となることを指摘すると、東電が把握している「適正な雇用契約にもとついている」との回答と実態が大きく異なっていることが明らかになった。ピンハネもしかりであった。

 労働者の被ばく線量管理では「法令にもとつく限度」では現に白血病労災患者が出ていることを踏まえさらに低い基準を設けるべきこと、労働者が退職後も健康診断を受けられるようにすること等を申し入れた。健康診断は会社が休業補償して受診させるべきなのに実態は賃金が支払われないケースがあることも指摘した。

 

瀧 秀樹(全労協脱原発プロジェクト)

 

残業代ゼロ法案
  連合修正案に異議あり 全国ユニオンが声明

 国会に提出されたままになっている高度プロフェッショナル制度などの労基法改正案について連合が政府に修正を要請するとした対応に対して、全国ユニオン(鈴木剛委員長)は7月12日、「組合員に対する売り切り行為であり、断じて認める訳にはいきません」とする連合・逢見事務局宛の「声明」を発表した。


 声明はまず、今回の連合の「異例ともいえる」対応が、高度プロフェッショナル制度導入や裁量労働制の対象拡大に反対してきた連合の「方針に反する」ものであり、逢見事務局長の「方針の転換ではない」という説明は、「誰弁以外の何物でもなく」、「修正内容以前に組織的意思決定の手続きにおいて非民主的で極めて問題」であり「連合の存在感を失わせかねません」と指摘。「働く者の現場感覚とはあまりにもかい離した行為」であり、「このままでは連合は国民・世論の支持を失うおそれがあります」と強調。最後に、「連合の構成組織の一員として、連合の政府への要請書提出に「反対」すると結んでいる。

 

(編集部)

 

原発
  東電元会長ら初公判この日を待ち続けた

 福島第一原発事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人の初公判が、6月30日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれた。原発事故の刑事責任が法廷で問われるのは初めで、公判では、大津波の予見可能性などが争点となる。傍聴者の手記を掲載します(編集部)。

 

 

 許されるはずはないと、この日を待ち続けました。ここに至るまでご尽力下さったみなさまに、早朝から傍聴券を手に入れるために並んでくださったみなさまに心から感謝します。
 バスは、早朝4時に福島を出発。車中でのくじで幸運にも2時間程傍聴することができました。
 法廷で圧巻だったのは、検察官役の指定弁護士の膨大な証拠書類でした。東電は大津波を予見していたのに、支出を抑えるために下からの報告を握りつぶしていたことを知り、強い怒りに駆られました。
 「大津波を想定できたか」が裁判の争点ですが、被告となった旧経営陣の3人には、福島で何が起きていたのかを、核を操ろうとする行為が狂気でしかないことを知ってほしいと思います。


 放射能は、自ら望んだわけではないのに、一人ひとりに生き方の選択を迫り、パンドラの箱を開けたかのように、家庭や地域に対立の構造と、いがみ合う心を植え付けました。
 夫の実家は双葉郡です。親族から「避難者だということを知られたくない」という言葉を聞き、置かれている現実を察しました。自主避難も、「権利」としての保障は当然なことです。
 郡山市では事故当初に、子どもたちの「集団疎開裁判」が起きていました。集団疎開を行政が認め、除染や復興の名目で大企業にばら撒かれている巨額な公金の一部を、集団疎開の費用に当てていれば、小児甲状腺がんも防げたかもしれません。子どもたちやご家族のためにも、責任が問われるべきです。

 福島は、次の事故に備えた実験場と化しています。20ミリシーベルトを適応し、放射能があっても帰還を促す。膨大な放射能ゴミの焼却。放射能を薄め資材として再利用する。すべてが次の事故での布石となります。
 福島の悲劇を繰り返さないためにも、司法が正義の立場を貫き、公正に判決が下されることを願っています。そのことが再稼働阻止にもつながると信じています。

 

佐藤 昌子(郡山市在住)

 

 

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