アジア@世界             喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
973号

★アルゼンチン: IMFとの新規融資契約に反対してデモ

 8月7日、IMFとの新規融資契約に反対して数千人の労働者、社会運動活動家が聖カジェタン教会からプラサ・デ・マヨ(5月広場)までのデモに参加した。
 このデモはCTEP(人民経済労働者連合)とバリオス・デ・ピー(立ち上がる地域)運動が「聖カジェタンの日」にあたる同日に呼びかけたもの。

 

 CTEPはマクリ政権に対して緊急の食料確保、労働者居住地区の環境改善、社会的インフラ、家族農業、麻薬中毒の5つの課題のための法律の制定を要求している。

 マクリ政権はIMFから500億ドルの新規融資を受けるための契約を締結しようとしているが、CTEPのリーダーのエステバン・カストロ氏は「IMFとの契約が効力を持つ限りこれらの課題への取り組みは不可能になる」と指摘している。

 

 今回のデモは15年にマクリが大統領に就任してから3回目の「平和とバンと屋根と土地と仕事のための行進」である。デモの先頭には「労働者はIMFに屈服しない」と書かれたバナーが掲げられていた。

 バリオス・デ・ピーのダニエル・メネンデス氏は「私たちは社会全体が政府の緊縮政策への拒絶を示すと確信しています」と語った。

 

 政府はIMFとの新規融資契約の一環として、19年までに財政赤字をGDPの1.3%に削減することを計画している。
 08年には政府はIMFに対して財政赤字をGDPの3.2%から2.6%に削減することを約束した。この約束の履行のために公務員の人員削減や前の左派政権の下で導入された社会政策の予算削減が進められた。

 最新の緊縮政策としてマクリは7月初めに、19年12月末まで(つまり大統領の任期中)公務員の新規採用を中止するという大統領布告に署名した。

 

(「テレスール」8月7日付)

 

★中 国: 家賃高騰で電子工場労働者が困窮

 深洲では都市再開発に伴う家賃の高騰でフォックスコムなどの電子工場の労働者が困窮を訴えている。
 フォックスコムの製造ラインの労働者は平均で月約4千元(1元は約16円)の収入だが、その3分の1は家賃に消える。このまま家賃が上がり続けると住めなくなる。

 

 6月にフォックスコムの労働者のグループが同社に対するオンライン公開状を投稿した。その内容は、家賃値上げに対応するための妥当な賃上げ、寮の増設などを通じて全従業員に支払い可能な居住スペースを保証せよというものである。

 同社の製造ラインの労働者のほぼ全員が農民工(農村からの移住者)であり、市の公共住宅には入居できず、工場周辺の人口が密集した「城中村」(都市の中の村)に住んでいる。
 同社は深洲のダウンタウンから15キロ離れた場所にあるが、労働者の居住地域には新たな商業地・住宅地開発が押し寄せており、すでに労働者が締め出されつつある。

 

 全国で都市計画や地方政府の住宅政策は一貫して農民工の住宅の必要性を無視してきた。多くの主要都市の住宅政策は低所得の家族のために低家賃の住宅を供給することよりも、富裕な移住者を引き付けることを目的にしている。戸籍制度や公営住宅の厳格な入居基準のために大多数の農民工は公営住宅への入居を申請することさえできない

 

 昨年末に北京市当局が火災防止を名目に「低端人口」(低所得者)の住宅の強制撤去を実施したことに対して大きな批判が起こったため、広州市や深洲市の当局は都市再開発のために、より柔軟な方法を採用しつつある。住民を強制的に退去させるのではなく、不動産業者と土地使用権保有者に問題解決を委ねているのである。

 

  フォックスコムの工場の近くでの万科の開発プロジェクトに関連して、住民たちはーカ月以内に退去することを求められている。

 労働者たちには何の法的な保護もなく、土地使用権保有者はいつでも家賃を引き上げることができるため、交渉の余地もない。

 

 フォックスコムの労働者が公開状を発表した後、同社の労働組合は市当局や業者とのコミュニケーションの改善に協力することを約束した。労働組合が労働者の住宅問題を認識したことはいいことだが、労働者が家賃を払える十分な基本給を保証されるためには、もっと多くのことをしなければならない。

 

(「チャイナ・レイバー・ブレティン」7月31日付より)

 

★イタリア: アフリカ人移住農業労働者が過酷な搾取に抗議してデモ

 8月8日、イタリア南部のフォッジャ県で、トマトの収穫作業に従事しているアフリカからの移住労働者数百人が、劣悪な労働条件・居住条件に抗議してデモを行った。
 このデモは同4日と6日に同県で農業労働者を乗せたバンとトラックの衝突事故が相次いで発生し、合わせて16人の農業労働者が死亡したことへの抗議として呼びかけられた。

 

 労働者たちは「奴隷はもうごめんだ」と書かれたプラカードや組合旗を掲げた。彼らは「居住地区には水道も電気もない」、「農園や果樹園との往復に定員オーバーのバンに乗るにも料金を払わなければならない」と訴える。

 

 FLAIlCGIL(農業労働者の組合)はこれらの衝突事故が回避可能だったか否かについて調査を始めている。(「AP」8月8日付等より)

 FLAIlCGILが7ロ月に発表した調査レポートによると、イタリアでは40万人以上の農業労働者がマフィアのような組織に違法な条件で雇用される危険にさらされており、13万2千人以上が極度に危険な条件の下で就労している。

 

 この調査に関わったロベルト・イオヴィノ氏によると「カポララト(農業マフィア)と呼ばれる現象はコミュニティー全体を蝕んでいる。農業・食品部門では合法・非合法の活動が入り混じっており、誰が法律を守っていて誰が守っていないかを見分けるのが非常に難しい」。
 このレポートによると、労働者の平均賃金は1日20~30ユーロ(1時間3~4ユーロ)であり、多くの労働者は週7日、1日8~14時間就労する。賃金水準は全国基準の50%程度であり、多くの場合、実際の労働時間よりも少ない時間数で計算される。出来高払いのケースもある。

 

 しかも労働者たちは毎日、小さなペットボトルの水に1.5ユーロ、通勤のバスに5ユーロ、昼食のサンドイッチに3ドルを支払わなければならない。さらに劣悪な住宅の家賃が月100~200ユーロである。

 労働者を監督するカポラレは労働者1人につき一日10~15ユーロの収入を得ている(カポラレはそれぞれ3~4千人の労働者を監督している)。

 この違法な搾取による収入は月数万ユーロ、あるいは数十万ユーロにもなる。この所得は課税されていない。

 カポラレはイタリア人だけではなく、ルーマニア、ブルガリア、モロッコ、パキスタンの犯罪グループや労働者派遣業者が自国の労働者を搾取しているケースもある。

 

 2017年の統計では、農業労働者100万人のうち約29万人が移住労働者であり、そのほかに未登録の外国人労働者が22万人いる。

 

(「lPS」7月27日付)

 

★ニュージーランド: ガザ支援の組合員がイスラエル軍に拘束される

 イスラエルによる包囲が続く中で困窮するガザの人々を救援するため、国際的な「ガザ自由の船団」が組織されている。

 7月に人道支援物資を積んでコルシカ島からガザへ向かった「アル・アウダ(帰還の権利)」号船(22人の活動家が乗船)が同31日にイスラエル軍によって公海上で阻止され、支援物質が接収され、乗船していた活動家が逮捕され、暴行を受けた。

 

 ニュージーランドの一般労働組合、ユナイトのマイク・トリーンさんもアル.アウダ号に乗船していた。彼は倉庫で作業中にイスラエル占領軍(10F)の兵士によって繰り返し殴打され、顔と頭を負傷したまま手錠をかけられた。同乗していた69歳の女性医師も頭を負傷し、カナダの高齢の活動家も足を負傷し、病院へ運ばれた。

 

 逮捕された活動家たちはテルアビブ近郊のギボン刑務所に拘留された。乗船していた2人のイスラエル市民は起訴された後、保釈された。

 

 ユナイトのジェラード・へール書記長は、「これは民間船舶に対する軍事攻撃であり、国際法違反である。マイク・トリーン氏を公海上でつかまえて、目的地でない国を強制的に連行する行為は誘拐であり、これも海上の安全に関する国際条約に違反している」とする声明を発表した。

 

(ユナイトのプログより)

 

アジア@世界 バックナンバー
協同センター・労働情報 〒101-0021 東京都千代田区外神田6-15-14外神田ストークビル502号 Tel:03-6806-0375 Fax:03-6806-0376