たたかいの現場から

962号

労契法20条裁判  郵政非正規勝訴に歓声格差是正へ大きな一歩

 郵政ユニオンの組合員である日本郵便の期間雇用社員11名が原告となって会社を訴えた「郵政労契法20条裁判」の提訴から3年。9月14日、東日本原告3名の東京地裁判決があった。
 判決は、私たちが求めていた10項目の手当と休暇のうち年末年始勤務手当と住居手当、さらに夏期冬期休暇と有給の病気休暇を取得させないことは、労契法20条に違反し不法行為が成立すると判断。損害賠償金92万6800円の支払いを日本郵便に命じた。判決内容は、テレビや新聞で大きく報道されたように、郵政だけでなく、多くの非正規・有期雇用労働者に希望となる大きな一歩となった。


 私たちは、大きな希望と多少の不安を胸にこの日を迎えた。判決を1時間後に控えた日本郵政本社前では、東京地評争議支援行動の一環として多くの組合員・争議団が参加し「勝利判決を勝ち取ろう!格差是正を行え!」とシュプレヒコールを響かせた。

 午後3時からの判決言い渡しには、130名の組合員・支援者が結集。
 法廷に入りきれない多くの人が裁判所前の歩道を埋め尽くしているところへ、「全員勝訴」「格差是正判決」の旗をなびかせて弁護士が走ってきた。「やったー!」と大歓声がわく。
 裁判所前での短時間の報告集会では、100%ではないが大きな意義のある一歩でありこれまでの苦労が報われたと、原告らは感無量で言葉に詰まる場面も。

 午後4時からは議員会館で報告集会が開かれ150名以上が参加。全労連、全労協、共産党、社民党やともに20条裁判をたたかうメトロコマース支部など多くの方から喜びと激励が寄せられた。

 並行して判決に対する声明文の作成を行い、厚労省記者クラブで記者会見。テレビ3台をはじめ30名近い記者、カメラマンを前に、弁護団が判決の意義を説明し、原告から熱い思い、そして郵政ユニオンの日巻直映委員長から「さらに働きやすい職場を作っていく」と決意表明された。


 会社側は、早くも翌15日控訴してきた。会社は、何も認めたくないという恥知らずな姿勢を明らかにしたものだ。
 私たちは、判決文の詳細は分析検討中だが、控訴審の中で完全勝利をめざす。また、原告8名の西日本裁判は、9月27日大阪地裁で結審を迎え、今年中の判決も予想される。

 郵政ユニオンは、この判決を力に職場から非正規差別と格差をなくすたたかいの新たなスタートとしていく。

須藤 和広(郵政ユニオン前書記長)

 

労働時問  残業代ゼロ法粉砕  津でデモと街頭行動

 9月9日、三重県の県庁所在地・津において労働弁護団の訴えに呼応しての労働法制改悪阻止を訴える街頭行動が展開された。
 労働組合の「ユニオンみえ」とユニオン運動を支える市民運動「ユニオンサポートみえ」の
共催。

 

 東京から駆けつけた全国ユニオンの鈴木会長は、働き方改革と称し残業に上限を儲ける規制と抱合せで提案しようとしているが安倍政権に騙されてはいけないと、法案に反対することを強く訴えた。
 日本労働弁護団の元事務局次長の小貫弁護士、佐藤社民党三重県連合代表に続いて塩田執行委員長と宮西サポート代表がアピール。法案成立阻止を訴えた。

 その後、近くの公園から津駅前ロータリーを回り、ショッピングセンターに向けて50人が隊列を組んでデモ行進。「1日8時間労働は労働者の権利だ」「残業代ゼロ法粉砕」「残業100時間は過労死ラインを超えているぞ」とシュプレヒコールをあげた。

広岡 法浄(ユニオンみえ書記長)

 

労働時問  月300時間に絶句  医師の過労でシンポ

 9月9日、都内で医師の働き方を考えるシンポジウムが開催された。先だって、国立循環器病研究センターで「月300時間、年間2070時間」まで時間外労働を延長できる特別条項付き36協定が結ばれていたことが報道された。これは、このシンポジウムに向け、松丸正弁護士が開示請求していた中で判明したものである。

 川人博弁護士はシンポで、応召義務について、医師個人に対して課されるべき性質のものではないこと、患者が医療を受ける権利は医師個人の責任として担保されるべきものではなく、行政の責任として担保されるべき性質のものであるとの考えを示した。


 現在、政府によって医師の働き方改革に関する検討会が行われている。その専門性、特殊性を理由として残業規制案から外されて議論されているが、医師であろうと紛れもなく労働基準法上の労働者であり、そしてなにより、人間である。
 自己研鐙や当直などで150時間、200時間など過労死ラインを大幅に超える超長時間労働を強いられる医師は数多い。
 一方、昨今の判例をみると、過労死、過労自殺事案で管理者に求められることというのは非常に高度であるといえ、本人が働きたいと言ったから働かせたといったところで管理者の安全配慮義務が満たされるわけではなく、止める必要性があるとまで踏み込んでいる。
 医師個人という単位ではなく、病院経営のあり方、地域医療のあり方といった広い枠組み
で解決に取り組んでいく必要性のある問題である。

木谷 晋輔(東京過労死を考える家族の会)

 

スラップ  最高裁の棄却に怒り フジビ本社にデモ

 5年前の9月14日は、富士美術印刷(フジビ)の子会社フジ製版で破産による解雇が強行されてフジビ闘争が開始された日である。

 その日の夕刻、フジビ会長自宅近くの田端台公園において、フジビ闘争支援共闘会議が主催する5周年決起集会と地域デモが行われた。約250名の仲間たちが結集した集会では、6月に整理解雇撤回・原職復帰を勝ち取った韓国サンケン労組らキム・ウニョン指導委員とオ・ヘジン支会長が来日して連帯挨拶を行った。


 フジビ闘争5年の闘いは、東京地裁の破産開始決定による解雇に始まる司法との連続した闘いであった。とくに、フジビが争議団のチラシや横断幕に記載した文言が「信用殿損」にあたると、組合員3名に2200万円の損害賠償を仕掛けた裁判は、強い者が弱い者の公的な発言を封じる典型的なスラップ(桐喝)訴訟であった。しかし、東京高裁は被解雇者3名に350万円の支払いを命じる前代未聞の判決を下し、最高裁も8月22日付で上告棄却の門前払いを強行したばかりだ。

 9.14決起集会は最高裁が労働運動を敵視する側に舵を切った不当決定への怒り渦巻く中に開催された。

中原 純子(東京労組フジビグループ分会書記長)

 

北九州  争議支援で創意工夫 NCの枠こえ連帯

 北九州では、自治労全国一般、北九州地区労連、全国一般全国協ユニオン北九州が共闘し、争議現場への支援連帯行動を行っています。
 この取り組みは、郵政ユニオンのストライキ支援をきっかけに、ナショナルセンター(NC)の枠を超えて、苦しい争議を闘う当該を励まし結集した組合員の団結で争議に打ち勝つために毎月取り組んでいます。


 昨年3月には、ユニオン北九州臼杵運送分会で、40名を超える仲間での構内集会を行い、団交での確認を反故にした会社統括支店長の謝罪を勝ち取りました。また、今年5月31日は、庄内衛生舎分会の春闘で、組合結成以降初めての抗議行動に取り組み、圧倒的な数の力で会社をギブアップさせました。
 数の力だけではありません。各組合が良い意味でのライバル関係となり、闘い方の創意工夫と平準化がなされています。

 「嫁候補」を理由として解雇されたトータスインダストリー分会への抗議として、テナントで入店しているデパートに対し、争議解決の協力要請の申し入れを行いました。この取り組みは大きな反響を呼び、解決を促す要因となりました。

末永 弘美(ユニオン北九州書記長)

 

 

 

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