たたかいの現場から

963号

公益通報解雇 団交拒む小池産業追及

 小池産業株式会社は、大阪市北浜に本社がある老舗化学品商社だ。東京支店のNさんは、顧客R社からの取決め金額よりも多額の売上入金(過入金)に気付いた。支店責任者のF執行役員は、支店内の関係職員に「R社が支払っている単価に小池産業社内単価を合わせ、帳簿上入金差異(過入金)を発生させないようにしろ」と指示した。

 R社が支払った「間違った単価」を間違いの指摘はせず、収入とし、「請求」を「偽造」する指示だった。

 Nさんは、指示の誤りを直属上司らに直訴した。F執行役員はその声をもみ消し、告発への報復として退職強要。これを拒否したNさんの職務を、見せしめとして引き剥がした。抵抗するNさんに出勤停止命令を出し、それにも抵抗するNさんを懲戒解雇とした。


 Nさんは、「ユニオンネットお互いさま」に加入。その後小池産業と計4回の団体交渉が行われた。

 小池産業は組合の追及に対し具体的に回答せず、見解が異なると言い、その後は5回以上にも及ぶ組合からの団体交渉申し入れを拒否し続けている。
 これに対しわれわれは、東京都労働委員会に不当労働行為の救済申し立てを行った。
小池産業東京支社での社前宣伝活動も2回行った。この闘いに対し北部労協などが中心に行った集会と組合内でカンパが寄せられ、組合からNさんを含め3人が参加する大阪本社の社前行動が実施された。天六ユニオン、大阪全労協など多くの現地の労組が支援に駆けつけてくれ、本社への要請行動も行われた。

 解雇撤回のシュプレヒコールと団結ガンバロウの声が大阪北浜の地に響いた。

吉田 雅明(ユニオンネットお互いさま副委員長)

 

長 崎 長崎バスユニオンが2日間全面スト

 長崎県最大のバス会社である「長崎バス」では、2015年12月、多数派労組の会社寄りの組合運営に不満をもつ運転士が、少数派労組「長崎バスユニオン」を結成。多数派労組500名超に対し、ユニオンの運転士は約120名。


 ユニオン結成後、会社は、ユニオンに不利な配車を強行し、ユニオンに異動した運転士は担当車両から外された。また会社は、ユニオンには事務所や掲示板を与えない、団交時は賃金をカットする、営業所会議に参加させない、新人社員への教宣時間を与えない、など、無数のユニオン差別を行った。ユニオンは、2016年11月11日に全面ストライキを敢行し、同年12月、長崎県労委に不当労働行為の救済を申し立てた。
 県労委の審理の中で公益委員が、公平な配車の和解案を出し、ユニオンは受諾。しかし会社は、「多数派労組とこれまで築いてきた関係が破壊される」ことを理由に拒否。そして会社は、ユニオンへの弾圧を一層強めてきた。


 会社は、ユニオンの組合員が多数派労組組合員に、車両問題の不満を述べたことを「桐喝行為」とし、ユニオンの組合員4名を、2017年10月1日から、5〜7日の出勤停止処分とし、かつ配置転換を命じた。多数派労組には処分なし。発言を捉えての処分は前例がない。
 ユニオンは、処分撤回を求め、10月2日・3日と全面ストライキを敢行。スト通告は1時間前。会社は代替要員確保に奔走。刻一刻と変わる状況は、ツイッター(takun1981)で実況中継した。そして10月3日、会社はユニオンに対し、「事前通告不十分なストにより損害を被った」として、文書で損害賠償請求を予告してきた。
 会社は、少数派の労働基本権に弾圧を加えて一向に恥じない。会社が悔い改めるまで、ユニオンはストライキ闘争を粘り強く続ける。ストにより、処分を受けた組合員は誰も辞めず、結束も強まった。平等な取扱いが実現すれば、逆にユニオンが多数派になるはずだ。


 労働組合よ、恐れずストを打とう。ストは憲法が認めた武器である。日常のあちこちでスト
が打たれていることが、普通の光景となる社会にしよう。

中川 拓(弁護士)

 

官製WP 法制度の厚い壁をなくす

 9月23日、大阪天満橋のエルおおさかにおいて「なくそう!官製ワーキングプア第5回大阪集会」が同実行委主催で開催され、午前の4分科会、午後の全体集会にのべ約150名が参加した。
 テーマは「期限のない仕事に期限をつけて雇用するな」で、5月に成立した改定地方公務員法及び自治法による「会計年度任用職員」制度への評価と対応策を広く話し合う設定。

 

 制度の特徴は、雇用(任用)期間を1年以内に限定、勤務時間によってフルタイムとパートタイムに分け、期末手当・退職手当など多くの手当を支給出来るのはフルタイムのみで、パートタイムには議会で承認(条例化)されれば期末手当のみを支給できると、労働時間による格差を固定したことだ。
 「期末手当すら出されていない多数の自治体で支給可能になるから半歩前進」、「これまでの取り組みで期末手当だけでなく退職手当や昇給制度、さらには多様な休暇制度、複数年度雇用が制度化されている自治体では改悪」になり、「労組法適用が一般職地方公務員化で非適用になる」ので問題、というように評価は分かれている。

 

 集会では、批判的意見が大半だったが、現実的に改悪させない取り組みを進めるための意見、提案が出され、今後その具体化を図ることとした。
 もうひとつ重要な報告、提案が、非正規地方公務員の公務災害補償問題だった。北九州市で非常勤相談員女性がパワハラ自死した件で、遺族が補償請求しようとしたら請求権自体がないとされたことへの提訴、さらに神奈川県臨時任用職員及び石川県津幡町非常勤職員による訴訟もあり、命や病気・怪我に関しても非正規公務員が制度面でも運用面でも差別されていることを取り上げ、その改善運動を提起した。これに関しては、11月6日(月)午後6時30分から東京ウイメンズプラザ会議室で研究会を開催するので関心ある方には参加していただきたい。
 なお、7月30日には「第9回東京集会」が120名の参加で開催され、また、年明けには第
2回北海道集会開催も予定されている。

白石 孝(官製ワーキングプア研究会理事長)

 

ユニティ・ユニオン バリカタ絆 福岡で交流集会

 10月7日、8日、第29回コミユニティ・ユニオン全国交流集会が福岡市で開催され、431
名が参加した。衆院解散から大きく流動化する情勢の中、活動・闘争報告を交換し合い交流を楽しみながらも、気を引き締め、闘う決意を強め、固める場となった。


 集会テーマ「バリカタ絆!諦めんたい!―確かな一歩で未来を拓く」。豪雨災害・朝倉被災母子支援センターへのカンパ要請。夜の交流レセプションでの連合福岡ユニオンのミニ劇上演と、締めでの炭坑節総おどり。11の分科会の中、連合福岡ユニオンによる団体交渉の進め方、全国一般福岡による倒産対策と、福岡らしさを多く感じられた集会であった。

 情勢を受けて、全体集会、分科会の双方の場で森友学園問題の火付け役、北大阪合同労組委員長である豊中市議の木村真さんから報告を受けた。メイン企画である「混迷する今、確かな一歩で未来を拓く」とのテーマでのパネルディスカッションでは、勝山吉章福岡大学人文学部教授をコーディネーターに、北九州の安元隆治弁護士、全国ネット顧問でもある中野麻美弁護士、全国ネット事務局長岡本をパネラーとして、憲法、労働法制の総破壊が進められる今、「平和なくして人権なし、人権なくして平和なし」を心に刻みユニオン運動を展開していくことが強く示された。


 今期方針では、安倍「働かせ方改悪」を許さず、安倍政権を退陣させよう!最賃全国どこでも今すぐ時給1000円に!そして時給1500円をめざそう!有期雇用労働者の無期雇用
化と組織化、均等待遇を実現しよう!くわえて、「雇用によらない働き方」の拡大を通じた非
労働者化の推進を許さない!民間・公務パート労働者、女性労働者の均等待遇と同一価値労働同一賃金を実現しよう!労働組合への権利侵害を許さない!―などを柱として確認した。
 最後に「憲法・平和と民主主義を守る闘い・労働法制改悪に反対する闘いを、全力をあげて取り組もう」との特別決議と、「『バリカタ絆!諦めんたい!』深い絆とあきらめない強い心で、今こそ一人ひとりが確かな一歩で未来をきり拓こう」との集会宣言を採択。来年10月6、7日に盛岡市で開催される第30回集会での再会を誓いあった。

 

岡本 哲文(コミュニティ・ユニオン 全国ネットワーク事務局長)

 

無期転換 労契法脱法の「東大ルール」揺らぐ

 東京大学は労働契約法18条にもとづく無期転換を妨げる独自の「東大ルール」を振りかざし非常勤職員の雇い止めを画策していた(10月号既報)。その後の動きを報告する。

 8月7日、短期間雇用職員の5年上限(+6ヵ月クーリング期間)を撤廃させるべく、東大
職員組合と首都圏大学非常勤講師組合との初めての共同団交が行われた。その席上で東大側は、短期間雇用職員の5年上限の是非については触れず、来年度から(一方的に)新設する(予定の)非正規職員制度(=限定地域職員制度・無期転換あり)の説明に終始し、非常勤講師総数は調査中であり、その目途がつくまでは労働条件通知書も出さないとした。5年上限もクーリングも見直さず、雇い止めが嫌なら新制度の地域限定職員(=フルタイム)に応募すれば良いという考えだった。

 短時間雇用職員には、短時間でしか働けない理由があることを配慮してもいなかった。結局彼らには、法律より「東大ルール」が優先するという傲慢な一面があると考えざるを得なかった。


 そこで8月23日、これまでの交渉経過を厚労省での記者会見で公表した。直後から、大学には多くの電話が殺到したとみられる。東大の代表番号がしばらくつながらない状態になったと複数の記者が教えてくれた。
 9月12日の事務折衝で、大学は、短期間雇用職員の6ヵ月クーリングについては廃止の方向で検討していると回答。10月10日の大学回答(メール)によれば、非常勤講師の就業規則の作成も検討し、総数も一応公表された。

 結局東大は、非常勤講師を労働者扱いしていなかった問題については講師の労働者性を認め、就業規則の作成も約束した。しかし肝心の短時間雇用職員の5年上限は未だに外そうとしていない。


 しかし非常勤講師の労働者性を認めた事実は大きい。2004年の法人化から非常勤講師は雇用者ではないという建前によって、以降の全ての労働者の過半数代表選挙から除外されてきた。東大の非常勤講師の総数は約3千人である。この弱点を追及していけば、短時間雇用職員の5年上限の設定(法人化後の就業規則の改正による)を凍結ないしは廃止させることができるのではないかと画策している昨今である。

松村 比奈子(首都圏大学非常勤講師組合委員長)

 

 

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