たたかいの現場から

964号

最低賃金  韓国の最賃引き上げ運動から大きな刺激

 最低賃金大幅引き上げキャンペーン2017は、最賃引き上げを労働運動の中心課題の一つとして掲げることを広げることをめざして、下町ユニオン、全国一般全国協議会、郵政産業労働者ユニオンの3労組が呼びかけ団体となって、潮流を超える労働組合が集まって運動を継続してきた。
 この秋以降、全国で「いますぐどこでも時給1000円に!時給1500円をめざして」「全国から引き上げよう最低賃金!なくそう地域間格差!」「1日8時間労働で暮らせる最賃を!」などをスローガンに、労働組合を中心とした集会の開催をめざしてきた。


 東京では、10月28日(土)夜に、「格差をなくせ!最賃をドカンと引き上げよう!――最賃を一気に引き上げた韓国から学ぼう」を東京・港区内で開催した。土曜日の夜だったということもあり、参加者は30名と多くはなかったが、安周永さん(常葉大学准教授/政治学)の講演「韓国の最低賃金大幅引き上げ実現の運動的背景」は参加者に大きな刺激を与えた。

 

 安周永さんが講演

 韓国では、労働組合の二つのナショナルセンターを中心に、社会運動団体、シンクタンク、左派政党など31団体が集まり、2002年に「最低賃金連帯」が結成され運動を担ったことが紹介された。講師の安周永さんが「日本の最賃引き上げ運動を見ていて不思議なのは、ナショナルセンターが運動の広がりをつくることに積極的であるようにみえないことだ」と指摘されていたのはまったく正当な指摘だった。
 社会的な広がりをもった運動をいかにつくるか、政治に圧力をかけられるような大きな連携をいかにつくるかなどの課題を、日本でもさらに考えてなければならないとあらためて実感した。

 講演を受けて、会場からの質問と発言が続いた。
 郵政産業労働者ユニオンの「労契法20条裁判」原告の浅川喜義さんが「20条裁判」での一部勝訴(本誌11月号で詳報)の意義と今後の運動についても発言。「最低賃金の引き上げと職場の労働条件の引き上げが非正規労働者が働き続けられる条件である」と強調した。
 東京東部労組メトロコマース支部の後呂良子さんは、企業側がパート労働者を低賃金で活用し続けている実態を告発し、「生活のために最低でも時給1500円は必要」と強調した。
 にいがた青年ユニオンからは、平野部と山間部での生活や経営の違いの問題が提起され、山間部での地域経済の再建をしながら最賃を大幅に引き上げる意義が語られた。

 最賃は、その重要性に比べて、「最賃を語る」場がまだまだ社会全体に少なすぎる。貧困問題突破のカギの重要な一つのハズだが、そうした議論もまだまだ少ない。「最賃を語る」取り組みを全国に広げて行くことの重要性を再確認する集会だった。

 

河添 誠(最低賃金大幅引き上げキャンペーン)

 

東部・メルスモン  雇止め・解雇撤回求めメルスモン製薬本社前で申入れ行動

 10月27日、医薬品の製造・販売を営むメルスモン製薬(東京・豊島区)で14年勤続・20回契約更新を重ねてきた有期雇用パートタイマー島津葉子さんが、9月15日付雇止め・解雇の撤回と復職を求め、同社池袋本社前で抗議アピールと同社に対する申し入れを行った。行動には島津さんが所属する全国一般東京東部労働組合(東部労組)各支部組合員18人と友好労組から12人が結集。会社による理不尽な仕打ちにつき抗議アピールを展開し、同じ職場で働く仲間に対し島津さん・東部労組との連帯と団結を訴えた。


 島津さんは2003年7月、メルスモン製薬川口営業所に入社・配属。以来14年間継続勤務してきた。契約更新回数も20回を数える。しかし、今年7月、会社は島津さんに対し来期契約不更新を通告。9月15日付の雇止め・解雇を突きつけてきた。
 まさに、これまでの島津さんの実績と会社への貢献を無に帰そうとする暴挙以外の何ものでもない。

 9月13日に加入した東部労組との団体交渉において、会社側は雇止め・解雇の理由を「仕事の範囲がより広がり高度となるからあなたでは力不足」「正社員の有資格者を入れた」などとあげつらってきたが、何一つ説得力を持つものはない。島津さんに研修を実施して十分対処てきるとの指摘に対しても「パートへの研修は考えていない」「これが会社の方針だ」と非正規労働者差別を隠そうとせず、あげくは「職場を若返らせたい」と年齢差別まで繰り出す始末。


 行動当日は、菅野存・東部労組委員長や司会を務めた矢部明浩同書記次長が、会社への抗議とともに、同じ職場で働く正社員に向け「島津さんを再び職場に暖かく迎えてほしい」「島津さんと団結して職場を働きやすくしていこう」と強く呼びかけ、島津さんからは「私一人では何もできないけれど、こんなに集まってくれて本当に勇気づけられた」との発言があり、島津さん本人による「職場に戻せ!」という力強いシュプレヒコールと団結ガンバローで本社前集会を締めくくった。
 島津さんは今後も、同社川口工場正門前での出勤する仲間に対するビラまきなど早朝情宣行動を敢行しながら、職場からの支援を粘り強くアピールしていく。

 

矢部 明浩(東京東部労組書記次長)

 

11.1 国会前行動  国会包囲し改憲止める労働者・市民の運動を

 11月1日正午、特別国会の開会日に合わせた「安倍9条改憲を許さない国会開会日行動」が総がかり行動実行委員会などのよびかけで行なわれた。衆院第二議員会館前(国会裏)におよそ1000人が集まった。


 社民党の吉田忠智党首、共産党の志位和夫委員長、民進党の相原久美子参院議員、立憲民主党の近藤昭一副代表、沖縄の風の糸数慶子代表が各党・会派を代表し、総選挙の総括なども踏まえながら国会内で安倍政権とたたかい抜く決意を述べた。
 そのなかで近藤さんは「不安のなかの選挙だったが街頭で励まされた。みなさんの声と連帯が安倍政治を押し返している」。
 糸数さんは米軍ヘリ事故にふれ「県民の命を何と思っているのか」と安倍政権を批判。「野党共闘発祥の地・沖縄では1区から3区まで野党候補が当選した。沖縄戦を経験した県民は改憲を許さない」と力強く語った。

 市民を代表し、共謀罪NO実行委員会の岩崎貞明さん(MIC事務局長)は「安倍政権は国際的孤立の道を歩んでいるが、政権と市民は違う。世界の人々とつながって自由と平和を守ろう」と語る。

 総がかり行動の高田健さんは「決してあきらめず、国会を揺さぶって改憲発議を止めよう」と呼びかけた。

 年明けの通常国会では労働法制の大改悪が企まれている。安 倍政権は主旨も性格も異なる8本の法案を「働き方改革一括法案」としてまとめあげ、可決成立させようとしている。「一括」は介護保険の改悪(14年)や戦争法(15年)の時と同じやり方だ。全世界の労働者が血を流してかちとってきた8時間労働制を解体に導く「高度プロフェッショナル」新設や裁量制拡大を阻止しよう。
 「戦争する国づくり」と労働者保護法制の解体、労働組合の無力化は一体のものだ。12月7日夜には日本労働弁護団のよびかけで、日比谷野音で大集会が開催される。職場の仲間を誘い合って参加しよう。

 

渡辺 学(全国一般労働組合東京南部)

 

大阪 ベーカリー  過酷な長時間労働!まるで『女工哀史』の現代版

 大阪市内に5店舗を有する洋菓子製造会社・シェ三宅で正社員として働いていた、全港湾大阪支部ユニオンおおさか組合員Aさん(女性)が、未払い残業代の支払いを求めて提訴した裁判の証人尋問が、10月13日大阪地裁にて行われた。


 Aさんは、ほぼ1年中、早朝6時から深夜12時前まで残業代なしで働かされ、退職前2年間の月平均残業時間は240時間超という、過労死した電通やNHK社員をも大幅に超える過酷な労働を20歳から15年間以上も強いられていた。賃金は毎月、額面22万円ポッキリだった。


 退職後、ユニオンに加入し、未払い残業代を請求することになった。

 当初は団体交渉で解決を試みたが、会社側は最終的に「120万円」しか提示せず決裂。昨年3月、労働審判を申し立てた。しかし、2年分でわずか880万円の請求額に対し、審判の内容は「300万円」と到底受け入れられるものではなく、異議申立てにより本年6月、本訴に移行した。
 本訴では、あまりに酷い労働実態を勘案し、慰謝料も含めた約1500万円強を請求し、今
年10月13日には最大の山場である証人尋問が行われた。
 圧巻は、社長に対する反対尋問。会社が「以前から存在していた」と主張する就業規則は、この会社に不釣りあいな程非常に良く出来たものであり、組合側弁護士が様々に問い質すと、社長はハンカチで懸命に汗を拭いながら、シドロモドロになった。全港湾や地域の仲間が詰めかけていた満席の傍聴席では、クスクス笑いが途切れなかった。


 Aさんの目標でもある「普通の会社」にするために、この裁判には、絶対に勝つ必要がある。それでも、青年期から15年間、早朝から深夜まで働き詰めだった彼女の、この間の人生は戻らない!

 

平石 昇(全港湾大阪支部ユニオンおおさか)

 

プリントパック  常務が組合脱退の圧力  全印総連直ちに抗議

 本年2月13日中央労働委員会において不当労働行為事件の和解が成立したプリントパック(本社・京都府向日市)で、再び組合脱退詰問・桐喝の悪質な不当労働行為が行われた。
 全印総連ユニオン京は、11月6日会社との団体交渉において本社第一工場のM君が労働組合に加入した旨通告した。この通告は、中央労働委員会での和解成立を受け、双方の主張に隔たりはあるものの、労働組合として交渉の信義を重んじて通告したものだ。
 しかし会社はこの加入通告に対して11月10日には団体交渉に出席する西原茂常務が、当該M組合員を会議室に呼び出し長時間に渡り、組合加入を詰問し脅しと脱退の圧力を掛ける違法行為を行なった。

 西原常務の発言は次のようなものだった。


 「組合は会社にとってはマイナス。そんなところにMくんが行ってしまったっていうことは、なんで?と思っている」
 「去年ブラック企業大賞入ったの知ってる?組合でやったとはいわへんけど、組合から元々出た情報からそうなったと思ってる。組合はマイナスになることをしてくれた」
 「団体交渉に参加してきたらわしは容赦せんよ。相当きつくやるからな」
 「会社と争うてなんの得になるん?会社が全てを握ってるのに、会社と争うなんて、方向が違うやろうっておもうわ。時間使ってお金使って組合には対応してやらなあかん、無駄やわ」

  「やっぱり自分で力付けて家族を守っていく、みんなで力を合わせて。そのみんなっていうのは、会社の人しかいーひんわ。それを見誤ったら自分の人生あかんわ。……人生で終わる選択をしかかっている」
 「組合費はいくらや?ただってわけにはいかへんやろ?スビーカーもって怒鳴りちらすんやからな。それでなにがのこるんや?なにがプラスになるんや?周りの人間が同調してくれんのか?団交の場でMくんと相見えることはしたくない」


 その後木村進会長も朝礼後に当該組合員に対して同様の桐喝行為を行っている。これら行為は、ようやく築かれつつある労使の関係を一から無視し破壊する行為で満腔の怒りを覚える。
 ユニオン京では、この不当労働行為に対して二度と行わない事を誓約する謝罪を求めたが、回答の期日とした11月15日(水)正午に誠意ある釈明が得られなかったため、15日13時に争議行為を通告した。16日早朝には本社前で、東京ではMIC総行動が神保町の東京支店に対して抗議申入れ行動を展開した。

 不当労働行為のやり逃げ・やり得は決して許さない。

 

井上 俊幸(全印総連ユニオン京)

 

 

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