たたかいの現場から

965号

伊方原発 被爆地ヒロシマで運転差し止めの決定

 愛媛県の伊方原発3号機の運転差止の仮処分で高裁抗告の決定が2017年12月13日、広島高裁であった。13時半、原告や支援者が裁判所前で待機する中、「伊方原発差止命令下る」の垂れ幕が踊り、大きな拍手と歓声に包まれた。

 伊方原発から100㎞、ヒロシマは原爆による内部被ばくが原発事故と共通点があり、原爆と原発はコインの裏表の関係がある。核と人類は共存できないとこれまで4次にわたり250人の原告により運転差し止めの裁判の本訴が取り組まれている。裁判を支える応援団も200人のぼる。そして何より瀬戸内海を死の海にさせてはならないと訴えてきた。その意味で今回の仮処分の判決格別の意味合いをもっている。


 広島高裁の決定は、広島地裁の決定をくつがえして「平成30年9月30日まで運転を差し止める」というもの。今回の決定は初めて規制委による「火山ガイド」を評価した。阿蘇山から130㎞の伊方原発への影響は「火砕流が到達する可能性は十分小さいとは評価できない」と判断した。火山立国の日本で他の原発に与える影響も大きい。
 これまで大飯原発、高浜原発で運転差し止めの決定が出ているが高裁での決定は初めて。
 弁護士によれば「小さいけど大きな一歩」だ。報告集会には松山はもちろん、香川、大分、山口から伊方裁判に関わった団体や福井からも参加、全体で150人が決定の意義をかみしめた。

利元 克己(さよなら原発ヒロシマの会)

 

介護総がかり 全国の介護現場から厚労省交渉へ

 2017年11月24日、介護現場と厚労省の交渉を行った。全国各地から介護職員、関係者、労働組合、20名の参加、55団体37名の賛同があった。

 交渉前に「介護保険改悪に反対」、「介護職員の処遇改善」を求める署名を合計2795筆提出。そして交渉開始。

 まず、介護保険について。

 ①要介護1、2の生活援助等の専門職による適切なサービスを切り下げ反対。総合事業見直し。②利用者負担引き上げ反対。③介護職の賃金・労働条件を国庫負担で改善。④介護報酬引き上げ。

 障害者総合支援法について。
 ①虐待通報が機能していない問題について。②障害福祉サービス利用者の65歳介護保険へ移行問題。
 厚労省担当者に対して、介護関係者が現場の切実な実態を強く訴えた。


 生活援助は身体介護と一体的であり切り離せないこと。家事代行との違い、高齢者の命綱になっていること。大阪府大東市の総合事業は、介護認定を受け付けなかったり、介護からの「卒業」を迫り、介護を受ける権利を奪っていること。その結果、半年で「要支援1」から「要介護5」に重度化した方もいる。
 厚労省に「大東市を評価しているホームページの削除」と「大東市に対し、被害者への謝罪と制度改善を指導すること」などを求めた。また、多くの市町村で、要支援者に対する介護報酬が低すぎて、要支援者を受け入れない事業所が多いこと。要支援者が行き場を失うことで、重度化に繋がっていること。

 訪問介護の時間単位が20分刻みになり、ヘルパーと利用者にしわ寄せがいっていること。ヘルパーの賃金・労働条件も悪化。福島からの参加者は、訪問の移動距離が長く、移動時間とガソリン代の負担がすごい。しかし介護報酬は都会よりずっと低くやっていけない。


 処遇改善加算金はパートや登録ヘルパーなど平等に支給されていない現場が多い。使用者は雇用形態に関わりなく全ての介護労働者に、賃金として、公平に分配しなければならない制度に改善すべき。介護報酬削減は中小介護事業所の倒産に繋がること。
 障害福祉サービス利用者が、65歳になった時、自治体によっては、一律で介護保険移行が進められていること。「それまでの生活が続けられるように従前の障害福祉サービスの必要な部分は継続できる」という周知が、利用者本人、サービス事業者への周知が十分ではないこと。

 その他、もろもろ、二時間半に渡り現場の声を伝えた。


 なかなか、すぐに成果は出ない。でも全国の介護現場から声を上げることで、制度を作る担当者へ、少しは届いていると思った。何より全国の介護関係者が繋がる可能性を実感した。今後も継続的に職場、地域、全国から現場の声を上げていきたい。

 

志賀 直輝(安心できる介護を!懇談会)

 

フジビ争議 座り込み1ヵ月 会社が和解の席に

 フジビ闘争はこの9月で丸5年が経過し、現在6年目の闘いとなっている。これまで、2つ
の裁判と労働委員会、そして現場闘争で闘ってきたが、裁判は2つとも司法による不当な判決・決定が出され、すでに終了した。特にスラップ訴訟は、労働組合の争議行為に対し個人の賠償責任を認めるという憲法違反の不当な決定である。
 私たちは屈することなく闘いを続け、10月には昨年に続きーヵ月連続の社前座り込みを貫徹した。天候に恵まれた昨年と違い、暑さと寒さとが交互に訪れ、終盤には台風が2つも関東を直撃したが、支援の仲間と座り込み富士美術印刷(フジビ)に怒りの声を上げた。


 昨年もそうだったが、座り込み期間中、フジビの会長は全く出社する姿を見せていない。私たちは抗議集会・地域デモ・毎週火曜朝の宣伝・そして座り込みと、年間100回近い社前での行動を行ってきた。こうした行動が効いたか、来年創業100周年を迎えるフジビは、中労委の場で和解のための話し合いの席に着くことを表明した。フジビからすれば、裁判や都労委で勝ち続けているにもかかわらず和解の席に着くというのは、やはり現場での大衆行動を嫌っているのだろう。

 しかしこれまでフジビは都労委で2回、和解を装い行動の中止を求めながら最後に交渉を決裂させた経緯がある。今回も年末年始に行動を中断することになったが、決して予断を許さない。
 引き続きのご支援を、よろしくお願いいたします。

 

小金井 俊弥(全労協全国一般東京労働組合フジビグループ分会)

 

JAL社前  寒風の中、JAL本社に解決迫る

 2017年12月14日夕方、東京・天王洲アイルのJAL本社前で、昨年最後の争議解決を迫る本社前抗議行動が行われた。
 今、JAL内では客室乗務員、パイロットとも高稼働という名の過密労働と稼働時間の延長により、体調を崩す社員が増えている。2020年のオリンピックに向け増える乗客に対応する態勢がとれるのか疑問視される。全労協議長、全労連副議長、支援の仲間からは一刻も早くこの争議の解決を決断することが今最重要であることが訴えられた。

 寒い中、約300人が参加した。

 

瀧 秀樹(労働情報事務局長)

 

教員集会 どうする長時間労働 現場教員らが討論

 教員の長時間労働が社会問題化している中、2017年12月9日、現場教員(元教員含)らによる学習討論集会が開かれた。主催は「『日の丸君が代』強制反対・予防訴訟をひきつぐ会」で、スペースたんぽぽにおいて約40人の参加で行われた。


 電通で高橋まつりさんが過労自殺して社会問題化したが、この事件で表象されるように日本の労働者の長時間労働は異常な数値となっている。特に教員の長時間労働は、悪状況とされる建設・製造・運輸・情報等の産業に比べても顕著となっている。
 教員の場合、給特法によって4%の調整給によって超勤手当は支給されないことになっており、他業種に比しても最悪な状況なのである。
 この集会での報告によれば、全教員の7割にあたる小中学校教員が週60時間以上の労働であった。特に1日の労働時間が最長11時間を越える教員の割合は、小学校37・4%、中学校68・2%、高校31・9%、特別支援校43・6%と異常な値が報告された。

 

 特に中学校の労働時間が最悪であり、若年教員の多くが朝7時台に出勤して、夜の9~10時に帰宅する状況のために、カップヌードルなどの食事が多くなっている。このために、出張先の旅館で出された朝食に感激していた若い教員の逸話も紹介された。
 特別支援校では、障がいを持つ生徒から帰るまで一時も目を離すことができず、その後の会議や事務処理で長時間労働となる実態も報告された。

 また他方で、どの校種でもパワハラが横行しており、見せしめを作ることによって、管理職は無言の長時間労働の強制を行っている実態が明らかになった。

 

 教員の過酷な労働は、そのまま生徒にも影響しており、豊かな人格を育むべき教育の問題としても深刻である。

 

永井 栄俊(「日の丸君が代」強制反対・予防訴訟をひきつぐ会共同代表)

 

【個人加盟ユニオンの組合費徴収】
 自動引き落としやチェックオフ~ゼネラルユニオンの挑戦

 大阪に本部があるゼネラルユニオンは、ホームページを活用した、面談やメール・インターネットで、全国的な多言語労働相談を展開しているが、「職場の組合作り」が、相談の前提であるため、相談者の労組加盟率が極めて高い。

 

 組合員の多くが有期・派遣や外国人であり、労組本部3役全員と、執行委員の8割が外国人、会議も多言語、という珍しい労組である。非正規中心であり、帰国や転職などで入れ替りも激しい。

 労組ニュースは、昔は、紙媒体で郵送していたが、現在は、メールマガジンや一斉メール、オルグ対象者には、ホームページやフェイスブックが活躍している。
 相談や加盟は、教育関連や派遣、多国籍の業界、すなわち、大学・教委・私学・語学学校が多く、ここでは、特定の産業のクラフトユニオンの性格が濃くなってきている。名古屋大の研究者により、今年出版された「ゼネラルユニオン研究」では、ゼネラルユニオン加盟の3分の2が、組合員である職場同僚や友人の紹介で、という調査結果が紹介されている。
 そのため、厚労省・文科省・年金機構や、語学の業界団体との交渉も展開し、結成27年目にして、各業種と各職場にある労組の支部が定着してきた、と言える。

 組合費納入は、機関誌に郵便振替用紙を同封する方法から始まり、労組本部などへの持参や手渡しもあったが、組合費の集約は容易でない。そこで、上記の、①郵便振替と、②手渡し以外に、みんなで知恵を絞った方法を、以下③~⑦で紹介する。詳細は秘密ではなく、日・英語のゼネラルユニオンホームページの「加盟・組合費」をクリックすれば、加盟方法と送金ガイドがあらわれる。加盟時に、組合員がこれらを選び、手続きしてもらう。

 

 ③銀行や、ゆうちょからの振込送金【半年・一年毎】④銀行や、ゆうちょ口座からの自動引落とし【毎月】⑤コンビニ窓口からの振込【半年・一年毎】⑥労組ホームページから、クレジットカード決済、などであり、何れも、「手数料が組合員負担」となるが、好評である。

 そして最近、新たな権利が拡大した。両刃の刃のユニオンショップでなく、「給与から組合費を控除する⑦チェックオフ」である。

 集団的労使関係が成立している支部が、産業別統一要求をしている結果であるが、少数派でも、一人一人の組合員が、加盟を会社に通告=カミングアウトして実現するため、権利意識向上がめざましい。
 例示をすれば、同志社【各校】・シノブフーズ【フィリピン労働者ら】・ECC【全国スト継続】・ベルリッツ【ベネッセ】・常翔学園【摂南大・工大】・パナソニック【エクセル】などである。

 おかげで、年間予算収入のうち、月500円~3000円の組合費が、収入の90%をしめ、チェックオフは組合費全体の過半数となり、安定した組合運営を可能としている。

 

山原 克二(ゼネラルユニオン)

 

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