たたかいの現場から

970号

#Me Too > もう私は黙らない 女性記者らネット結成

 メディア業界で働く女性およそ90人が、5月15日、記者会見で「メディアで働く女性ネットワーク」の設立を発表し、ついに自らの声を取り戻した。

 きっかけは、財務省官僚による性的な嫌がらせと、それに次ぐ人権侵害とも言える麻生太郎財務大臣の発言の数々。

 

 会見にあたり、麻生大臣、任命責任がある安倍晋三総理大臣、また野田聖子女性活躍担当相にも要請書を提出。麻生大臣においては、これまでのハラスメントの2次被害ともとれる多数の発言を撤回し謝罪することにあわせて、セクシャルハラスメント研修を受けることなどを求めた。

 17日には財務省へ直接要請が実現し、野田大臣には、セクシャルハラスメントをなくす法整備に着手するよう申し入れるため懇談を要請している。

 

 19名のネットワーク会員から届いた証言には、実際の被害経験についても深刻な記述が散見されたが、共通して見えてきたのは女性たちが声をあげることをあきらめ泣き寝入りさせられてきた実態だった。
 これまで権威ある取材対象や社内で性的嫌がらせにあいながらも、周りからは「いなせて一人前の記者だ」と言われ、自分にも言い聞かせてきた。それを後輩にも同じように強いてきてしまったこと、またハラスメントを許さない土壌を築けなかったのは、自分たちが声を殺してしまったからだと、猛省する姿があった。
 女性ジャーナリストから声を奪うこと、彼女たちが知り得た情報を操作することは、市民の知る権利と報道の自由を侵害することになり、民主主義の根幹をゆるがすことにつながる。
 声なき声に耳をすませ、報道して社会を変える一躍を担いたいとメディアの世界に身を投じた女性たちが、まさに自分たちがその当事者だったと気づくとともに「もう#私は黙らない」と決意した瞬間だった。

 

松元 千枝(メディアで働く女性ネットワーク代表世話人)

 

 

#Me Too > 民放労連、セクハラ根絶へ 民放連に申し入れ

 4月18日、民放労連女性協議会と民放労連は、週刊誌の報道に端を発した財務省・福田事務次官による女性記者へのセクシャル・ハラスメント疑惑に関し、次官・大臣・財務省の対応に強く抗議し、各メディア企業には被害者保護のためあらゆる対策を求める声明を発表した。また民放連と制作会社の団体ATPにハラスメント根絶に向け緊急申し入れを行った。

 民放連は、これまでの相談事例は主にパワハラで、これを機会に襟を正して取り組んでいくと話した。

 

 民放労連の運動方針は「あらゆる性差別やハラスメントに反対し、職場での周知徹底と研修を求め、相談窓口の設置と相談者の側に立った具体的な救済措置」を経営者に要求している。これは、放送で働くすべての労働者とその労働者が働くすべての職場や場所が対象であり、相談者のプライバシー保護はもとよりその相談事案に対する最大限の救済措置を求めている。
 声明発表後、次官が辞職。テレビ局の記者会見によって放送労働者が当事者であることが明らかになった。被害にあった方だけでなく相談を受けた上司も顔と名前をネットに晒されることとなった。

 

 放送局や制作会社などには相談窓口があるものの、きちんと機能しているか、窓口担当者教育や相談しやすく相談者が守られる仕組みなどを改めて見直す必要がある。放送局社員でも相談が容易な環境ではないので、局内外の様々な雇用契約の労働者、関連会社、プロダクション、フリー契約者などが相談し難いことは言うまでもない。
 今回の問題について、取材方法、会社の対応、放送局は政府から軽視されてはいないかなど、視聴者からいろいろと疑問を抱かれているだろう。そのような中でも、私たちは、勇気を出して世の中に問題を知らせた記者の行動を受け止め、ハラスメントのない社会の実現を目指して活動していきたい。

 

脇山 恵(民放労連常任中央執行委員)

 

北九州 > 日本セレモニー 解雇争議で"弾圧"

 北九州市では、人口の割に葬儀社が多いということもあり、各社がマイクロバスで葬儀の参列者を送迎するというサービスが行われている。

 Yさんは、2016年6月に八幡典礼会館(日本セレモニー)に入社し、マイクロバス運転手として勤務していた。しかし、マイクロバス運転手は葬儀のある時だけ呼び出される「ある時雇用」であり、なおかつYさんは、2016年10月の社会保険の適用における法改正によって、一方的に会社から週20時間以下へと勤務時間を減らされた。
 生活できないほどの低賃金に追い込まれたYさんは組合に加入し、団交でフルタイムの安定した雇用を勝ち取ることができた。その後も、職場の労働条件の改善を要求して活動していた。

 

 昨年8月、マイクロバスの合理化の問題が浮上した。陸運局より「白タク」行為であるとの指導がなされ、近い将来、「外注化」の可能性が高いとの話が出てきたのだ。
 ほぼ同時期に、Yさんが同僚と交わした会話が「セクハラ」と言われ、そのことを確認しよ
うと相手に接触したところを「暴行」とされ、本人に対する事実調査も賞罰委員会も行われ
ないまま、わずか2日後にYさんは一方的に解雇された。
 組合は解雇撤回と団体交渉の開催を要求したが会社が拒否を続けたため、福岡県労働委員会に救済の申し立てを行った。北九州市内の各典礼会館、下関市の本社に対しての抗議行動も取り組んだ。
 それでも、解決の姿勢を見せない会社に対し、組合は、3月20日の郵政ユニオンストライキの後、代表取締役である神田社長の自宅への抗議行動を行った。近頃では珍しい大邸宅だった。
 自宅前の集会を始めてすぐに会社管理職が妨害し、申し入れもビラ情宣もできなかった。仕方なくハンドマイクを使って1時間弱の集会を行った。

 しかし会社は、4月29日、面談強要等の禁止を求める仮処分を申請した。やってもいない面談強要やビラ配布を禁じようとする許しがたい“弾圧”だ。よりいっそう闘いを強化し、解雇撤回・現職復帰を勝ち取りたい。

 

末永 弘美(ユニオン北九州書記長)

 

日本通運 > 無期逃れで雇い止め 撤回めざす裁判始まる

 日本通運の事業所で倉庫事務に7年以上従事してきた女性労働者0さん(40歳)が、3月31日、契約期間の満了を「理由」に雇い止めとなった。
 0さんは日通の派遣社員で2年半働いたのち、2012年6月1日から直接雇用となり、ほ
ぼ1年ごとの契約更新を繰り返してきた。採用時に会社から「安定して業務があり、長く働いてほしい」といわれ、ずっと働き続けるつもりだった。

 

 労働契約法改正以降、雇用契約書に「13年4月1日以降、最初に更新した雇用契約の始期から通算して5年を超えて更新することはない」という一文が入ったが、会社からは「契約書の書式が変わっただけだ」と説明されただけだった。ところが昨年7月の契約更新時に突然、「18年3月31日で契約終了」と通告され、雇い止めが強行された。

 

 Oさんが加入したユニオンネットお互いさまとの団体交渉で日通は、「雇用契約書にもとづく契約終了」の一点張りだ。

 団交の中で、労契法改正に伴い無期転換権が発生することについて会社と全日通労働組合(企業内組合)との間で労使合意がされ、0さんはその線引きから外れたことが明らかになった。

 会社は「経営判断である」「0さんは雇用契約書の記載内容を理解して署名しているのだからそれで充分だ」と豪語している。

 

 5月21日の第1回弁論から、雇い止め撤回をめざす裁判が始まる。司法の場でも労働約法18条違反の無期転換逃れの雇い止めを断罪し、0さんの職場復帰をかちとりたい。

 

小林 久美子(ユニオンネットお互いさま)

 

山陽新聞 > 組合方針を理由にした出向拒否を許さない

 直営化を求めているから、別会社で運営する新印刷工場に出向させない―。岡山市に本社を置く山陽新聞社が、言論報道機関にあるまじき不当労働行為を働いている。社内の自由な言論を封じ、会社の方針に異を唱える者に、不当配転で応えた。

 

 山陽新聞労働組合(以下、組合)は、4月24日、岡山県労働委員会に救済を申し立てた。
 山陽新聞社は、5月7日、岡山県早島町で新印刷工場を本稼働させた。新工場の稼働に伴い、本社直営工場は廃止され、本社印刷部で勤務していた私たちの組合の2人(正副委員長)は、新工場への出向を希望していたものの、編集局工程管理部という全く場違いな職場に配転された。一方、第二組合の印刷部員は、希望者全員が新工場への出向を認められた。
 新工場への出向問題は、昨秋から交渉が続いていたが、会社は、3月になって正副委員長を出向させないと組合に正式通告した。その後、3月23日に組合に交付した文書で、組合が新工場の直営化を求めていることが、出向させない理由であると明言した。

 

 私たちは、新聞発行の最終工程まで自社で運営することが読者への責任だと考えている。また、紙面で同一労働同一賃金を主張しながら、本社からの出向社員と、別会社社員との間の賃金格差を容認するのは、読者を欺くものだと考えている。そのため組合は、一貫して新工場の直営化を求めてきた。
 労働組合の正当な行為を理由にした不利益取り扱いは、労働組合法第7条1号違反だ。さらに、組合の団結権を侵害する支配介入でもあり、第7条3号にも違反する。

 

 山陽新聞社は、半世紀前に私たちの組合を分裂させた。いま、私たちの組合は3人という少数になった。中央労働委員会や岡山県労委に別件が係争中だが、会社に対して異議申し立てをする私たちが疎ましく、社内での影響力を削ぎたいのか。
 しかし、必ずこの闘いに勝利して、2人をインクの匂う新工場へ出向させたい。皆さんのご
支援を心から願う。

 

藤井 正人(山陽新聞労働組合書記長)

 

三菱電機 > 武器輸出の三菱電機を不買運動で追い詰めよう

 戦後の「国是」とされた武器輸出三原則を、安倍政権が閣議決定のみで撤廃して4年。幸い完成品の輸出が実績ゼロに留まる中、懲りない安倍政権による新たな案件が急浮上している。

 

 3月、国家安全保障会議(NSC)がタイ軍の防空レーダー入札への三菱電機の参加を承認。警戒管制レーダー「FPS3」をもとに、タイが求める仕様に合わせて提案し、価格は10~20億円になると見られる。

 政府関係者は、連続受注や関連装置の受注などの波及効果に期待を寄せている。タイ政府は、早ければこの春の内にも結論を出すと見られている。

 

 今回の案件は、軍事政権への露骨な武器輸出であること、「インド太平洋戦略」の名で日本が米国と一体となり進めている中国包囲網づくりの一環であることに加えて、何と言っても、安倍政権による輸出第一号になりかねない点が重大だ。
 三菱電機はすでに、武器輸出三原則の撤廃直後に認可された日英ミサイル共同開発にも参加しており、もはや武器輸出の“確信犯”と言わざるを得ない。

 

 安倍政権を実績ゼロで退陣させるために、私たちNAJATは三菱電機への不買運動に踏み切った。4月19日にキックオフ会見を行い、4月23日には三菱電機とタイ大使館への申し入れも行った。対象となる家電製品も挙げながら、呼びかけを続けているが、不買の動きはまだ盛り上がっていない。
 ツイッターでハッシュタグ「#三菱電機不買」を付けてつぶやいてほしい。三菱電機に電話(03-3218-2111)して「武器輸出するならもう買いません」と伝えてほしい。
 消費者として「買わない権利」を行使することが、武器輸出を止める確かな力になる。
 6月9日(土)には13時に秋葉原駅昭和通り改札外に集合して、「このままいけば『死の商人』三菱電機から買わないで!秋葉原・ヨドバシAkiba前アピール」も行う。

 日本を「死の商人国家」にさせないためにぜひ力を貸してほしい。

 

杉原 浩司(武器輸出反対ネットワークNAJAT代表)

 

 

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