たたかいの現場から

972号

北九州 > 過労死生むコンビニ配送 時給800円打破へ要求

 2015年9月、ファミリーマート北九州定温センターで配送を請け負っている新生物流サービス(本社広島)の乗務員が、休憩中にユーチューブを見ていたという理由で「乗務停止」を受けた。
 この問題をきっかけに、職場の支援する仲間とともに「ユニオン北九州新生物流サービス分会」が結成された。荷主である明治乳業系の管理職から下請け乗務員に対し「殺すリスト(首切り)に入れるぞ」という言葉が日常的に使われていることも発覚した。

 

 団交拒否をする会社に対して10月には、争議集中行動(全国一般争議分会支援連帯行動)として構内でのスクラムデモや抗議行動も闘われた。
 ようやく団交が始まったが、乗務停止は就業規則にもないことがわかった。また全従業員から謎の「組合費」名目の控除や、配送する弁当などの破損に対し乗務員に弁償を強制していることなどが次々と明らかになっていく。

 万事休すとなった会社は、謎の控除や弁償についてユニオン組合員に限り廃止と金銭の返還を行った。

 

 その片方で、第2組合を「交通労連関西総支部大阪トラック連合」につくらせ(いまだに組合費だけ徴収し、団交を一度も開催していないという驚くべき「実績」)、12月には、乗務停止を撤回しないまま「解雇」を強行した。

 解雇撤回闘争は、抗議行動を軸にしながら、仮処分決定を勝ち取り、本裁判において会社は「職場復帰を認める。復帰条件は組合と協議決定する」という和解が成立。2017年3月に職場復帰をした上で、12月に最終解決となった。

 

 2017年1月、長野県のファミリーマートの駐車場で配送中の乗務員が亡くなる事件があり、この年の8月には労災認定がなされた。
 北九州定温センター・新生物流でも、一日14時間から16時間労働は通常の勤務。しかも何年働いても時給800円の賃金。
 乗務員は競って長時間労働を給与確保のため強制される実態。当初は残業代も付いてない時給のみ。

 解雇撤回闘争を闘いながら組合は、残業代の支払いを要求。まず組合員、そして乗務員全体(第2組合員にも)に支払わせた。

 

 今年の春闘では、時給1500円か勤続給をつけるかなどいくつかの選択肢を会社に要求している。会社は根拠も示さずゼロ回答を続けている。
 労基署は、長野県の事件のあと集中的に監査を行っている。しかし、会社は、時間を短縮することだけを行い時給800円は変えない。乗務員は辞めるか飢餓賃金で働くか、に追い詰められている。時給800円を突破することなしに、過労死か飢餓賃金かを防ぐことはできない。

 コンビニ配送乗務員の18春闘は、まだまだこれから。命がけの要求は続く。

 

本村 真(ユニオン北九州)

 

静岡 > フィリピン人委員長解雇 証人尋問で派遣会社追及

 焼津市はマグロやカツオなどの水産加工で働く人が多い街。冷凍の魚をバンドソーで切ったり、切り身の皮などをグラインダーで削る作業には、多くの外国人が働いている。
 その外国人労働者の半数はフィリピンのダバオ、そう、かのドゥテルテ大統領の出身地から来ている日系人がたくさんいる。
 そんな彼らが、「有給休暇を使いたい」など、労基法の権利のための労働組合を作り、学習を始めたのは2年半ほど前だった。

 

 一昨年リサリート委員長が「お里帰り」のために有給休暇を使った。派遣会社が有給休暇の賃金を払わなかったため、リサリート委員長は労働基準監督署や簡易裁判所の「少額訴訟」を活用し、分割ではあったが全額支払わせることができた。
 しかしその後、昨年一月、派遣会社は「無断欠勤」をでっち上げてリサリート委員長を解雇してきた。弁護士さんをお願いし地位保全の仮処分を始めたところ、「この解雇は維持できない」ということで、派遣会社は6月、解雇を取り消さざるを得なかった。
 しかし、派遣会社は旧来より労働条件の悪い派遣先しか提示しなかったために、弁護団と話し合ったリサリート委員長は不法行為と損害賠償の裁判へと進んだ。

 

 6年間働き続け、人間関係もあった職場に戻れなかった理由は派遣会社にある。7月3日の証人尋問では、派遣会社側が「派遣先確保」の努力を行わなかったことや、労働組合を嫌悪していたことなどが弁護団の反対尋問で明らかとなった。
 裁判官は8月30日の和解を提案し、双方が準備へと進んでいくこととなった。

望月 吉泰(静岡県中部地区労)

 

大阪 > 喫煙者「密告」制度 教育合同が緊急交渉

 人権擁護宣言都市・堺の「看板」は地に墜ちた。

 6月1日から8日にかけて堺市が強行した「学校園敷地内喫煙に関する緊急調査」は、堺市で働く全教職員の人権を否定し労使関係を崩壊させた。教育合同が一月以上にわたって抗議を繰り返し、団交の中で調査撤回、集計一時中断を要求しているにもかかわらず、市教委はそれを無視。日々、人権侵害、不当労働行為をし続けている。児童生徒を受動喫煙の害から守るためなら、どんな無法を行ってもよいのか。

 

 調査項目は ①(自分が)喫煙したことがあるか、ないか ②同僚教職員の喫煙を見たことがあるか、ないか ③「見た」のは、いつ、どこで(学校園名)、誰が(教職員名)か、の3項目(2017年度、18年度限定)。

 

 各自が封印した物を市教委に持参するよう校園長に指示したことで個々の教職員に配慮したつもりかもしれないが、回答は「任意でなく必須である」とした段階で、すでに、自白・密告を強要する人権侵害である。

 しかも、調査票には「虚偽の回答をした場合、責任が加重される」との脅し文句を掲げる一方、憲法が保障する黙秘権についてはひとこともふれないという違法調査である。さらに、調査対象には非常勤、長期休暇中の者も含むとする。

 

 教育合同の動きを封じるためか、堺支部への情報提供は調査開始の前日午後4時過ぎまで遅らされたが、週明け火曜曜の昼前には抗議申し入れ、緊急交渉を断行。しかし、「『通報』があって、調査しなければならない状況に至った」「噂レベルを超えた信愚性のある通報だった」と言うだけで、「通報」の詳細については口をつぐんだまま、本当に「通報」があったのかさえ疑われるような回答に終始した。

 通報された学校だけを対象に調査すればよいのではないか?セクハラ、パワハラ、いじめ、体罰など、もっと重要な問題は放置しておきながら、なぜ、今、タバコなのか?等々、こちらの質問には何一つ答えられない。

 議員が絡んでいるわけではない、と繰り返すものの、では、何が堺市をそこまで追い詰めているのか、いくら問い詰めても答えない。

 

 文教委員会での調査批判の議員質問、朝日新聞記事掲載という状況の中、組合は市役所前でのビラ撒き、市長への申し入れも行ったが市は非を認めようとしないので組合は7月9日、大阪府労委に団交拒否、支配介入での不当労働行為申立および緊急措置としての実効確保の措置申立をおこなった。

 何一つ誠実に答えずに突っ走る市の「怯えた強硬姿勢」をやがて組合は打ち破るつもりだ。

 

(大阪教育合同労働組合堺支部)

 

外国人就労 > 重なるボタンの掛け違い 企業の理解、なお浅く

 労働組合ネットワークユニオン東京が現在取り組んでいる争議の一つに、ビルマ=ミャンマーの135民族の一つラカイン(アラカン)という少数民族に属する30代の男性が、2009年、民主党政権下で難民認定され、明治大学の難民支援プログラムを受け、日本語で論文を書いて同大学を卒業した。後に日本語能力試験1級にも合格し、日本語での日常会話に不自由せず、新聞も読みこなす実力がある。

 

 15年4月に、品川区にあるかストマシステム(株)という中堅のIT会社に、エンジニアとして“新卒”採用された。同社は東芝府中工場にエンジニアを常駐させている。彼も新人研修期間を経て16年春から同所に配属されたが、ほどなく上司らから「仕事ができない」と連日叱責されてメンタル不調となり、16年末以降出社不能、休職期間満了を理由に17年8月に雇用を打ち切られた。

 現在、訴訟を視野に入れての代理人間交渉が持たれているが、会社の外国人雇用に関する理解の薄さには絶句することしばしばである。

 

 「ミャンマーでのビジネス展開を考えていて、その担当として採用」→帰国できないから難民なんですけど!
 「採用時に『難民です』と言わなかった」→在留資格を確認していないのか!?
 手続き面のみならず、たとえば長らく軍事政権下にあった母国では、理数系の教育がボロボロで……理科の実験は「物事を疑う」から体制批判につながるという理由で、学校ではやらなかった……、残念ながら日本の水準から程遠いことや、人前で恥をかかされることを非常に深刻に受けとめる文化(軽い冗談では済まない場合がある)、敬慶な南方上座部仏教徒として嘘やゴマカシを許せない宗教倫理観などについての無理解から、いくつものボタンの掛け違いでトラブルに至ってしまった。
 「日本の大学を出ているから大丈夫だろう」という安易な考えは、「親が日本人だから大丈夫だろう」と無策のまま日系労働者を入れた頃から1ミリも進歩していないようだ。

 

寺尾 そのみ(ネットワークユニオン東京書記長)

 

日通雇い止め > 裁判で「無期逃れ」追及 傍聴席も満席に

 日本通運を雇い止めされた労働者0さんが会社を訴えた無期転換逃れ地域確認等請求事件の第2回口頭弁論が、7月12日、東京地裁で開かれた。
 第1回弁論には、日通側は誰も出廷せず、被告準備書面も約束の提出期日に遅れ、第2回弁論の数日前に提出された。

 

 開廷前、地裁前に集まった多くの労働組合、団体、ユニオンネットお互いさまの組合員から、ビラを配布しながら激励、連帯のあいさつを受けた。傍聴席も満席となり、会社側傍聴者に席を譲り、傍聴できない人も出た。

 

 0さんは5年10ヵ月(派遣時も含めると7年4ヵ月)、支店社員として日通で働いてきた。
 日通は0さんを、労働契約法18条の無期転換権が発生する前日の3月31日をもって雇い止めした。
 日通は、労働契約法が改正された後の契約更新時に、雇用契約書の不更新欄に「2013年4月1日以降、最初に更新した雇用契約の始期から5年を越えて更新することはない」を挿入。
 説明を求めたら「契約書の様式が変わっただけ。不利になるようなことはしないから」と“説明”していた。

 

 0さんは雇用期限が切れる直前に次の雇用契約書を渡され、「下記を超えて更新することはない『2018年3月末日』と書いてあり、それを承知で大の大人が署名・捺印したのだから有効」と主張。働き続けられる期待を無視し、合理的理由もなく雇い止めした労働契約法19条違反だ。

  「正社員の退職後の職を確保するため、契約社員はその調整弁」と団交で言い放つ日通の横暴を黙って見ているわけにはいかない。

 

(ユニオンネットお互いさま)

 

民族差別 > 朝高生からお土産没収 税関の非情に怒りの声

 今年はGHQの指令を受けた日本政府が「朝鮮人学校閉鎖令」を発令し、日本全国の朝鮮人学校を閉鎖しようとしたことに反対した阪神教育闘争から70年目にあたる。この闘争では日本国憲法下で唯一の非常事態宣言が布告され、大阪では当時16歳の金太一さんが警官隊の発砲で殺された。

 

 戦前も戦後も朝鮮人弾圧は継続している。不当な「制裁」や高等学校授業料無償化からの「排除」をはじめ凄まじいまでのヘイトも投げつけられる。

 6月28日には母国への修学旅行から帰国し関西空港に到着した神戸朝高・高3生徒ら(62人)が、親戚や友人からもらったお土産を税関当局にすべて没収された。怒りの記者会見では「生徒たちは心からの贈り物を目の前で没収され、その非情さに心を引き裂かれて泣きじやくった」との証言があった。

 

 すぐさま「高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」が中心となって団体署名が集められた。署名には「関西空港税関支署による今回の措置に対し、改めて強く抗議の意を表明する。わたしたちは、神戸朝鮮高級学校の生徒のお土産品をただちに返し、二度と同様の事態を起こさないようにすること、また、在日朝鮮人の人権を政治外交上のカードにするかのような非人道的な対朝鮮独自制裁措置をただちに廃止することを強く求める」とある。

 短期間で団体・個人7564通が寄せられ、7月19日には政府へ提出・抗議行動も行った。

 

水谷 研次(team rodojoho)

 

#MeToo > MIC女性連絡会が緊急セクハラ110番

 7月1日、日本マスコミ文化労組会議(MIC)女性連絡会が労働弁護団女性PTと共催し、メディアで働く女性のために初の緊急セクハラ110番を実施した。
 ここから見えてきたのは、女性労働者が「ハラスメントも仕事の一環」と思わされ、「この程度の被害は被害とは言えない」と過少評価してきた現実だった。

 

 #MeTooや#WithYouの運動が広がる中で女性記者から被害の告発が相次いでいる一方、相談件数は予想をはるかに下回る結果だったが、相談を担当した圷由美子弁護士は、このギャップこそが問題だと指摘する。
 労働政策研究研修機構(JILPT)の2016年調査結果では、63・4%の被害経験者が、なんの対応もせずに我慢したと回答している。

 

 電話相談当日は、出版、放送、新聞・通信の職場について相談があり、どの相談者も「セクハラがマスコミ業界で常態化していることを伝えて欲しい」と話した。
 ある女性は、放送局で勤務していた当時、非正規労働者だった自分の弱い立場を利用して、正社員から弄ばれたと報告した。
 また別の放送局勤務の女性は、酒席で胸を触られたことに対して加害男性に謝罪を求めたが、酔った上でのことだとして応じてもらえなかったと告発。
 声をあげると「面倒だ」と思われ、仕事を回してもらえなくなるのではという不安を抱えていたり実際に退職勧奨された例もあった。

 

 圷さんは、「今回の電話相談からは、セクハラ被害を受けたことで当事者は自信を喪失し、10数年前のことであっても生きている限りずっと被害は続いていくものだと深刻さを改めて感じた。労組とともに実態をもっと掘り起こしていきたい」と話した。

 

松本 千枝(team rodojoho)

 

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