たたかいの現場から

976号

入管法改正 > 拙速審譲に現場から批判 連合、移住連など集会

 「守ろう!外国人労働者のいのちと権利」集会が10月31日に参議院議員会館の会議室で開催された。

 主催者の集会実行委員会は、連合、移住連、実習生弁連、在日ビルマ市民労組、JAM、労働弁護団、実習生権利ネットで構成し、昨年も10月31日に「守ろう1外国人技能実習生のいのちと権利」集会を開催している。

 

 新しい技能実習制度が、矛盾を抱えたままスタートして1年。政府は、深刻な人手不足を背景に、就労を目的とする新たな在留資格「特定技能」を創設し、外国人労働者の受入れ拡大を図る入管法改正案を国会へ提出。短期間の審議で成立させて来年4月には施行させようとしている。

 

 与野党国会議員25人以上が出席し、報道関係者の注目も高い集会となった。
 パネル討論は、指宿昭一さん(技能実習生弁連)が討論の進行まとめ役となり、村上陽子さん(連合)、鳥井一平さん(移住連)、棄一郎さん(労働弁護団)、小山正樹(JAM)がバネラーとして発言。
 第1に、技能実習法施行後1年間の状況と評価を、鳥井さん、小山から報告。人権侵害、労基法・最賃法違反や強制帰国の実態など、技能実習制度の問題点が明らかにされた。
 第2に、入管法等改正案(法案骨子)に対する議論に進み、法案ではまだ制度の中身も固まらず、準備もないままに拙速に審議入りさせようとしていることへの批判、技能実習生制度におけるブローカーの中間搾取、職場移動の自由制限、違法な働かせ方の横行などの多く問題点が払拭されないままに新たな受入れ制度を導入することへの批判、多文化共生の社会づくりの議論も未整備であることへの批判などが出された。

 

小山 正樹(JAM参与)

 

静岡 > フィリピン人委員長解雇 和解で解決

 全国一般焼津地域労組のフィリピン人委員長に解雇通告が出されたのは16年12月、同年2月に組合が結成されたばかりだった。

 委員長が派遣会社に要望していた社会保険加入が4月に実現するが、賃金を一方的に減らされたことなどを議題に10月、団体交渉を申し入れたことから事件は始まる。

 

 会社はこの時、賃下げする新たな契約書に署名するか「無断欠勤だから解雇するか」と委員長に迫った。委員長は署名を拒否し解雇された。
 会社の解雇理由はでっち上げで、地位保全の仮処分を申し立てたところ会社側は解雇を取り消したが、それ以前より賃金の安い職場を提示してきたため、本訴を提起した。

 

 証人調べの後、裁判所から和解案が提案され、11月1日、解雇撤回、同日会社都合退職、解決金の支払いなどで解決した。

望月 吉春(全国一般焼津地域労組)

 

東リ争議 > 労働契約申し込みみなし活用 「勝たせる会」が結成総会

 11月3日、大阪市内のPLP会館で、「東リの偽装請負を告発し直接雇用を求めるL・I・A労組を勝たせる会」(略称:東リ偽装請負闘争を勝たせる会)の結成総会が開かれた。

 

 村田浩治弁護団長は、東リを相手に、直接雇用・地位確認を求めている裁判(神戸地裁)の意義を語った。
 民主党政権下で派遣法に盛り込まれたのが、東リ裁判で拠り所にしている同法40条の6「労働契約申し込みみなし」制度だ。適用が認められれば、多くの違法派遣・偽装請負状態で働いている全国の労働者に直接雇用の道が開かれる。

 「パナソニックPDP判決から10年となる来年、ぜひ、勝利判決を」と村田弁護士は力説した。

 

 共同代表におおさかユニオンネットの垣沼陽輔代表(連帯労組近畿地方本部委員長)、コミュニティユニオン関西ネットの大橋直人共同代表を選出した後、当該労働組合LIA労組の5人全員が決意を語った。
 藤井書記長は、「全国の非正規労働者がどんなひどい目に遭ってるか、全国の方に知ってもらって、非正規という言葉がなくなるようにしたい」。

 中西組合員は、「私は東リに、物凄い後悔をさせるくらい謝ってほしい」と静かに語った。その言葉の背景には、3交代勤務や高温過重労働を、正社員の半分の賃金で最長18年間も働かされてきた怒りがある。違法を告発したら社外に放りだされた。何としても勝つ決意を込め、藤澤LIA労組委員長の団結がんばろうで締めくくった。

井出窪 啓一(なかまユニオン執行委員長)

 

福島原発過労死 > 遺族の闘いで労災認定を実現

 昨年10月26日、福島第一原発廃炉作業現場で勤務中に亡くなった車両整備士猪狩忠昭さんの遺族がいわき労基署に労災申請をした(本誌8月号「福島発」)。

 

 労基署は6月下旬、これまでの態度を変え、「調査報告書を労働局から差し戻された。いわき市の会社から大熊町の原発間の往復移動は出張移動であり運転した場合を除き過重労働時間と評価しない(労災認定上の労働時間にカウントしない)」と言い出し、「(6時15分の)構内入りから(7時の)朝礼までの時間は、労働時間にカウントしない」とも述べた。

 心疾患に関する過労死認定基準は「発症1か月前100時間、6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える状況」であり、忠昭さんの労働状況は、はるかにこれを超えていた。一方、労基署が6月に出した見解にもとづけば毎月の時間外労働が50時間台になり、労災が否定される可能性が高まった。

 

 全国一般全国協議会いわき自由労組は遺族と共に、質問形式で労基署に申し入れを行った。
 原発での車両整備は5年間連日行われ、用務先への臨時の出張ではなく通常の業務であること。そして入構から朝礼までは、小型線量計の装着や防護服の取り出しなどの実作業に必要な準備行為である等を述べ、強く再考を求めた。遺族も補充意見書を提出した。

 

 忠昭さんの1回忌直前に当たる10月16日付で労基署は遺族補償年金等の支給決定を行い、口頭で遺族に「調査した結果、脳・心臓疾患と労働時間が超過していたため認定させていただきました」と述べ、遺族は墓前に報告することができた。

 

 安倍政権発足後、労働行政がますます使用者利益優先になりつつある。この中で、遺族の1年間のひるまない闘いが労災認定をかちとった。

星野 憲太郎(東北全労協幹事)

 

さいたま新都心過労自殺 > 労働行政の矛盾に直面 労災認定求め運動再開

 10月24日、さいたま市内で、さいたま新都心郵便局過労自死事件の責任を追及する会の第6回総会が開かれ、労災認定を求めて運動を再開することが確認された。

 

 総会で報告に立った青龍美和子弁護士は、17年10月の労災不支給決定後の労基署とのやりとりを報告。審査官は、「いろんな案件が山積みで、手をつけられていない」と言っているが、背景には、厚労省による労災担当官の大幅減員がある。尾林芳匠弁護士は「現在の認定実務の矛盾が凝縮している」と語った。

 

 郵政ユニオンの日巻直映委員長は、自死につながった4要因(トヨタ方式の立ち作業、翌朝郵便、「お立ち台」、年賀状の販売枚数ノルマ)がすべて廃止に追い込まれたことを報告。運動が進んでいることを感じさせた。

 

 遺族は、「審査官の上から目線には息子もあきれていた。しっかり調査してもらいたい」と述べた。

 会に参加した郵便局退職者は「(郵政)公社時代にも、4階から飛び降りた人がいた。新都心局は刑務所のようだ」と語った。

(編集部)

 

ディズニーランド > 安全配慮義務問い提訴 会社が圧力かける書面

 ディズニーランドでキャラクターとして出演していた女性2人が、株式会社オリエンタルランドに「安全配慮義務違反」を問う裁判が、11月13日、千葉地裁で始まった。

 

 原告Aさんは17年1月、出演直後から激痛がはしり、「胸郭出口症候群」と診断された。同年8月、船橋労働基準監督署は、過重業務による労働災害と認定した。Aさんが所属するなのはなユニオン・オリエンタルランドユニオンはAさんとともに、衣装の軽量化、出演時間の短縮、出演回数の減、休憩時間延長などの改善を求め交渉を重ねた。
 しかし、会社は「労災認定=安全配慮義務違反ではない」と主張。Aさんは「怪我したら、フォローもなく“さよなら”では、夢の国に未来はない」と、裁判に踏み切った。

 

 原告Bさんは、客にあいさつをする業務中、客から指を反対側に曲げられ怪我をしたことを労災申請したとき、上司から「我慢しなきゃ。君は心が弱い」と言われる。その後も、「過呼吸になったら辞めてもらう」「30歳以上の婆入らないんだよ」などのパワハラを受けた。

 Bさんは「我慢しても何も変わらない。続けたいので、安心して働ける職場にしたい」と、裁判を決意した。

 

 会社は争う姿勢を示し、記者会見直前に「守秘義務がある」とする書面を原告2人に送達してきた。ユニオンは裁判開始に合わせて舞浜アクションを開始した。#Me Tooの声があがることを願 う。

(なのはなユニオン委員長鴨桃代)

#パワハラ禁止法作ろう  オンライン署名呼びかけ

 セクシュアルハラスメント(セクハラ)禁止と被害者救済に必要な法制度について議論する院内集会が11月8日開かれた。セクハラ対策に関わる労働問題の専門家ら4人が、セクハラの抑止力となる法律づくりについて意見を交わした。

 

 現在、厚生労働省の労働政策審議会分科会で、職場のハラスメント防止対策について審議が進んでいるのを受けて、新聞やテレビ、インターネットメディアなどで働く女性たちのグループ「メディアで働く女性ネットワーク」が主催。国会議員や市民ら170人が参加した。

 

  労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員は「都道府県労働局に相談しても、行政の紛争解決制度や調停で救済されるのはごくわずか。加害者から謝罪がなかったり、慰謝料が十分に払われなかったりと、被害者が望むものが得られない仕組みになっている」と強調。
 日本労働弁護団の圷由美子弁護士は「均等法を用いて、セクハラ訴訟を起こしても、裁判所は『均等法は行政指針にすぎない』とまともに取り合わない。今の法制度では被害者は救えない」と指摘。

 

 連合の井上久美枝総合男女・雇用平等局総合局長は、国際労働機関(ILO)が来年職場での暴力やハラスメントを規制する条約制定に向けて動いていることを踏まえ、「条約を批准できるレベルの国内法整備を」と訴えた。
 さらに、上智大の三浦まり教授は、新法づくりに向けて今後取り組むべき具体的な方策について説明した。

 

片山 由紀(北海道新聞記者)

 

ユナイテッド航空争議 > 解雇撤回求め500人が銀座をデモ

 11月2日、ユナイテッド航空に対し解雇撤回を迫るデモが行われ、500名を超える人たちが夜の銀座を歩いた。日本語と英語のアナウンスで力強く訴えるテモは注目を集め、足を止めて訴えを聞いたりヒデオ撮影する通行人の姿もあった。争議は重要な局面に差し掛かっている。今後ともご支援をよろしくお願いします。

 

(全国一般・全労働者組合FAユナイテッド闘争団)

 

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