アジア@世界              喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
985号

★香港:8・5ストに向けた労働者の5つの要求

 8月5日、香港で「逃亡犯条例」の撤回を要求して航空、交通、小売、金融などの部門でストライキが行われ、各地で集会が行われた。

 以下はこのストライキの先頭に立ってきた職工会連盟(工盟)の同日付の声明である。

 

 この2ヵ月間、香港の人々は逃亡犯条例改定案に対し、105万人が参加した6月9日のデモや200万人が参加した同16日のデモなどを通じて自分たちの意志を表明してきた。

 しかし、キャリー・ラム行政長官は民衆の要求を無視しつづけ、悪法の永久的撤回を発表することを拒否し、デモを暴力的に鎮圧するために警官隊を動員している。

 

 香港政府の傲慢な態度と警察の暴力的な弾圧は民衆の怒りをさらに増大させ、抗議とデモが持続している。
 7月21日夜、白いシャツを着た暴徒のグループが棍棒などの武器を使って一般市民を無差別に襲撃した。……このような暴力は香港の人々への重大な脅威であり、ますます多くの人々を激怒させた。

 

 労働者にとって香港は私たちの仕事、家族、愛する人、そして生活の拠点である。私たちは香港の崩壊と消滅を見たくない。私たちのこの拠点を守ることは私たちの責任である。
 私たちは香港の子供たちが果敢に街頭に出て、警察によって乱暴な扱いを受けるのを見てきた。私たちはこれ以上状況に目をつむることはできない。
 香港は私たち全員のものであり、一握りの人たちによって支配されたり破壊されたりすることは許されない。

 

 したがって、職工会連盟は階級、職業、職種に関わりなく香港のすべての働く者が8月5日の全市ストライキの呼びかけに応え、政府が香港民衆の以下の5つの要求に応えるよう要求するよう訴える。

 

1 「逃亡犯条例」の永久的な撤回。
2 不当に逮捕されたデモ参加者の釈放。
3 6月12日のデモに対する「暴動」規定の撤回。
4 警察の暴力と権力の濫用に関する独立的な調査。
5 完全な普通選挙の実施。

 

 8月5日のストライキに向けて工盟は香港のすべての雇用主と従業員に次の4つの要請を行った。

 

1 私たちはあらゆる分野の雇用主に対してストライキへの理解と協力を要請する。逃亡犯条例改定案は香港の労働者や一般市民への脅威であるだけでなく、ビジネス環境にも重大な打撃を与え、投資家の信頼を損なうものである。工盟は雇用主に対して、8月5日にストライキに入るか、労働者が各地区の集会に参加できるよう特別の手配を行うことを要請する。

 

2 私たちは労働者に対して、8月5日にさまざまな集会に参加し、メッセージを拡散し、職場や産業の仲間たちにも参加を呼びかけることを要請する。労働者は事前に雇用主または監督者にストライキや集会への参加について正式の通知を提出することができる。

 

3 私たちはまた、あらゆる分野の労働組合が雇用主または管理者に対して、従業員がストライキによって8月5日の集会に参加することを許可し、組合が提案する保障措置に同意するよう要請することを訴える。私たちはこのストライキが政治ストであり、労働争議によるストとは性質が異なることを強調する。

 

 闘争の焦点は雇用主でも管理者でもない。市民としての責任を果たし、香港の未来を守ることである。

 したがって私たちは雇用主が立場の違いを脇に置き、組合によって提案された要求と保護措置を支持することを期待する。

 保護措置には以下のような措置が含まれる。

 

・スト参加を理由とする給与・手当の減額を行わないこと
・ストに参加した従業員への懲戒処分を行わないこと
・ストに参加した従業員に対する差別的扱いを行わないこと

 

4 ストに参加した結果として従業員が不当な扱いまたは差別を受けた場合、私たちはそのような扱いを受けた労働者が工盟および工盟の傘下組合に相談することを要請する。
 私たちはまた、まだ労働組合に加入していない労働者にも、できるだけ早く労働組合に加入するよう強く訴える。職場に独立した労働組合が存在しない場合は、自分たちの労働組合を設立することによって、集団的な力で将来における闘争の条件を強化することもできる。

 

 

★ドイツ:若者が呼びかける気候ストライキに労働組合が参加を決定

 ドイツ第2の労働組合、ヴェルディ(200万人)は若者が中心になって世界の150力国以上で計画されている9月20日からの「未来のための金曜行動」(気候ストライキ)への参加を組合員に呼びかけた。

 

 サービス部門の労働組合であるヴェルディの8月5日付のツイッターへの投稿は「私たちは力を合わせた時にだけ気候を守ることができる」と訴えている。

 「AP通信」によるとヴェルディのフランク・シルスケ委員長は同日「WAZ」紙に、200万人の組合員にストライキへの参加を呼びかけていると語った。

 

 気候ストライキの主催者によると、ストライキは9月20日から始まり同27日まで続けられ、世界で数百万人が参加すると予想される。

 「グローバル・クライメート・ストライキ」のウェブサイトによると、この行動は気候危機に関する史上最大の動員となる。

 

 気候ストライキのきっかけとなる行動を開始したスウェーデンの環境保護運動家のグレタ・ツンベルクさん(16歳)はヴェルディがクライメート・ジャスティス(公正な気候変動対策)のための世界的な運動に参加を表明したことを称賛した。

 「これがリーダーシップです。次は誰でしょう?世界が注目しています」と彼女はツイートした。

 

 ドイツの気候変動問題活動家のルイサ・ノイバウアーさんもヴェルディの動きを称賛し、他の組合もヴェルディに続くよう訴えた。

 彼女は「信じられないことが起こった。この危機の背後で若者と労働者が手をつないでいる。次はどの組合が参加するだろうか?」とツイートした。

 

 9月の気候ストライキはニューヨークで開催される国連気候変動問題サミットに世界のリーダーが集まるのに合わせて行われる。

 主催者たちは7月に発表した声明の中で次のように述べている。

 

 「今こそ世界のリーダーたちが気候危機の真実に目覚める時である。民衆の力を示すことで私たちはこの1週間を歴史の転換点にする。気候危機は緊急事態である。私たちはそれにふさわしいやり方で行動し、惰性的なやり方を止めなければならない。私たちは政府に対して、人々が望むもの、つまりクライメート・ジャスティスを見せつける。……この9月に数百万人の人々が家や職場から街頭に出て、化石燃料の時代を終わらせることを要求するだろう」

 

(「コモン・ドリーム」誌8月6日付)

 

★インド:賃金法・労働安全衛生法の改悪に反対して10大労組が統一スト

 8月2日、与党系の組合を除くすべての有力組合がモディ政権が進めようとしている労働法制の改悪に反対するストライキに入った。

 労働者と組合は、提案されている変更が工場所有者に有利な内容で、労働運動や労働者の権利を抑圧するのをより容易にするものであることを強調している。

 

 インド全土での抗議行動はモディ政権が7月23日に2019年賃金法案と2019年労働安全衛生法案を連邦下院に提出した直後に、インド労働組合センター(CITU)、全インド労働組合会議(AITUC)、全インド労働組合中央評議会(AICCTU)など10のナショナル・センターによって呼びかけられた。
 労働組合リーダーや活動家たちはこれらの法案がインドの労働法の全構造を破壊し、労働組合を一掃することを目指していると指摘する。

 

 7月30日に下院で賃金法案が可決されたことにより既存の労働者保護の枠組の解体が開始された。

 新しい賃金法では最低賃金の計算方法、就業日の基準、および法律の施行手段が変更され、その結果、賃金に関連する労働法の保護的な性質が事実上破壊される。

 最低賃金を決める際に家族の必要カロリー摂取量を基準とするというILOで採択されている原則が無視され、しかも7月10日に発表された新しい最低賃金は2年前よりも低くなっている。

 

 CITUのアル・シンドゥー書記長は「政府は非常に狡滑なやり方で、組織労働者と未組織化労働者の間の論争の中でこの問題をすり抜けようとしている」と指摘している。

 

 労働者にとって工場主による不当な解雇や嫌がらせに抵抗する最後の手段は抗議することだった。

 しかし、新しい法律によってその最小限の権利さえも奪われる。

 

(「ニューズクリック」紙8月2日付より)

 

 

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