アジア@世界             喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
992号

★ブラジル:農業改革の縮小に怒る女性労働者が農業省を占領

 3月9日朝、MST(「土地を持たない農村労働者運動」)の女性メンバーたちが首都ブラジリアの農業省を占領した。

 全国の24州から3500人の労働者がこの行動に参加した。

 

 庁舎を占拠した女性たちは「私たちは怒っている。私たちの土地、私たちの生物多様性、労働者階級が獲得した権利を守るために。私たちはボルソナロ政権と帝国主義的国際資本の間の殺人的・破壊的な同盟が、暴力を生み出していることを非難する」と叫んだ。

 

 労働者たちは農地改革における入植地として割り当てられた土地の個人所有地への分割という政策(企業への売却に道を開く)や、公共投資の削減、安全が確認されていない農薬の自由化などに抗議している。

 

 MSTは記者会見の中で、「経済の失敗を隠そうとする現政権の努力にもかかわらず、ブラジルの人々は公共投資の削減の影響を肌で感じている。失業者は数倍となり、多くの人が家も食料もない絶望的状況に置かれている。

 ブラジルは国連食糧農業機関(FAO)が調査に基づいて作成している飢餓マップに再び取り上げられるようになった」と指摘している。

 また、ボルソナロ政権の下で農業改革の政策が大幅に縮小、予算が削減された。

 

  この日の行動は同5日からブラジリアで開催されていた全国MST女性会議の締めくくりだった。
 MST全国コーディネーター(ジェンダi問題担当)のマフォート・アティリアナ・ブルネトさんによると、この行動は5年間にわたる女性組織プロセスの成果である。

 

 「同志と私たち自身が女性の問題の観点からの闘い、女性に対する暴力の問題の暴露のプロセスを強化してから5年が経ちました。
 ……私は私たちの土地では女性に対する暴力はないと言える日を楽しみにしています。私たちは女性とすべての人々への敬意と平等と連帯を実現するために闘い戦い続けます」と彼女は言う。

 

(「ブラジル・デ・ファト」3月10日付より)

 

★メキシコ:女性への暴力に抗議、全国女性ストライキへ

 メキシコでは毎日平均10人の女性が殺害されており、多くの人が不安を感じ、この暴力に怒っている。

 3月8日の国際女性デーの一環として、メキシコシティーでも数万人がデモに参加した。さらに翌日にも、最近の陰惨なジェンダー関連(と思われる)の殺人とそれに対する政府の無関心に抗議して全国的なストライキが呼びかけられた。

 

 これはメキシコの歴史上初めての女性ストライキであり、この国の経済に大きな影響を及ぼすだろう(”NNOO万人の女性労働者がストライキに入れば1日で260億ペソの経済的損失が予想される)。

 

 この運動は全州における中絶合法化(現在は2州のみ)を要求する運動やLGBTIQの人たちの権利、トランスジェンダーの人たちにヘイト犯罪や暴力の一掃を求める運動と共に、社会的な注目を集めている。

 

 工業都市で、最も社会的に保守的な都市と言われているモンテレイで、女性のデモに初めて参加するジェシカ・カスティージョさんは、「メキシコのフェミサイド(女性殺し)は前からひどかったですが、ますますひどくなっています。政府はこの問題について何もしていないし、関心を示していません」と言う。

 

 2018年の選挙で「暴力と組織犯罪の根本原因に取り組む」ことを約束したロペス・オブラドールが大統領に選出されたが、彼の政権のこれまでの15ヵ月で暴力事件の数は史上最高に達した。

 公安局によると今年1月に320人の女性が殺害され、そのうち73人がフェミサイドとして記録されている(15年1月の2倍以上)。

 国家人権委員会による推定では、記録されているフェミサイドの90%が有罪判決を受けていない。

 

 3月9日に全国でストライキに入ることを呼びかけたグループはブルージャス・デル・マー(「海の魔女」)という名で知られ、他のフェミニスト・グループと全国的なネットワークを形成している。

 数日のうちにビンボ(世界最大のパンメーカー)、ウォルマート、グーグルなどの企業や大学、一部の地方自治体がストライキを選択した女性たちへの支持を表明した。労働組合はこのストライキに関与していない。

 

(「オープン・デモクラシー」3月5日付より)

 

★チリ:100万人余がデモに参加

 チリでは100万人以上の女性が3月8日のデモに参加する準備をしている。これは昨年後半に始まった社会的な騒乱状態(本誌10年12月号を参照)に再び点火すると予想される。

 4月にはピノチェト独裁政権の下で制定された憲法の改定に関する国民投票改革が実施される。

 

 チリ南部のコンセプシオン市でのデモを組織しているベレン・カルカーニョさんは、「チリの社会運動は常に女性によって押し上げられてきました。何十年も前の独裁政権の時代には困窮者のための無料の給食から人権のための闘争まで、抵抗を率いていました。今日も私たちは中心的役割を担っています」と語る。

 

 国内最大のフェミニストの政策提言グループであるラ・コーディナドラ・フェミニスタ8Mの代表のアロンドラ・カリージョさんは、「チリの女性たちはより一般的な運動の要求のほかに中絶の合法化、家庭内暴力の一層、職場における平等の拡大などのジェンダー関連の問題のために闘っています」と言う。

 

 チリのフェミニスト・グループが歌う反レイプの歌(「ア・レイピスト・イン・ユア・パス」)は世界中の抗議運動の賛歌となっている。昨年11月に初めて演奏されたこの歌は国家の抑圧が性暴力を鏡に映したもので、警察、裁判官、大統領が攻撃の共犯者だと訴えている。

 

 チリでもラテンアメリカの他の諸国と同様に、ジェンダーに基づく暴力が感染のように広がっている。

 毎日平均42件の性的暴力が報告されているが、裁判になるのはわずか25.7%である。

 昨年、46人の女性がパートナーによって殺されている。

 

 フェミニストたちはピニェラ大統領の右派政権が女性の権利の問題についてはほとんど何もしておらず、それどころか現在の制限されている中絶をさらに厳しく制限しようとしている。

 隣国アルゼンチンでは中絶合法化が実現しようとしているのと対照的である。

 

 サンティアゴのクィア・バーを経営するマカレナ・コルテスさんは、「私たちはみんなそれぞれの理由で行進します。私はレズビアンですから、ゲイであることを理由に殺されたり、愛する人と手をつないだために殴られるようなことがない文化のために行進します」と言う。

 

(英国「ガーディアン」紙3月6日付より)

 

★香港:工盟が李卓人書記長の逮捕に抗議

 2月28日朝、民主的労働組合、HKCTU(工盟)の李卓人書記長が「違法集会」を開催したという容疑で逮捕された。

 工盟はこの弾圧を香港市民および労働者の結社の自由をさらに抑圧するための策謀であるとみなしている。

 同じ日、政治家の楊森氏(民主党)と出版社社長のジミー・ライ氏も同じ容疑で逮捕されており、香港警察による計画的な作戦である。

 

 3人は昨年8月31日に、中国全人代決議(香港の普通選挙を否定し、2014年の雨傘運動のきっかけとなった)の5周年を「記念」する違法集会に参加したとされている。

 この8月31日の集会では集会後のデモが終わった後、警察の機動部隊が地下鉄の駅に乱入し、デモ参加者も一般の通行人も無差別に襲撃し、多くの重傷者を出した。

 ところが、この警察の残虐行為に関する独立した調査が実施される前に、警察はこの日に平和的なデモに参加したとされる政治リーダーたちを逮捕したのである。

 

 平和的集会の権利は国際規約などに明記されている。この国際規約は香港に無条件で適用される、香港政府は昨年6月に「逃亡犯条例」反対運動が始まって以来、47件の大衆集会を禁止している。

 今回のような不当逮捕に異議を唱えなければ、将来さらに多くの人が政治的迫害の犠牲者になるだろう。

 

 したがって、工盟は香港政府に対して次のことを要求する。
・李卓人ら3人へのすべての容疑を取り下げること
・市民的および政治的権利に関する国際規約の第21条および香港基本法の第27条を遵守し、香港市民の集会の権利を尊重すること
・平和的集会への一切の制限を解除し、平和的集会に警察が介入しないことを約束すること
・警察官の残虐な暴力行為と不当拘留に関する独立的調査を実施すること。

 

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