たたかいの現場から

996号

自販機 〉不当配転で提訴と労委 台数削減、業界規制へ

 私たち総合サポートユニオンは、自動販売機の飲料補充や料金の回収などを行う労働者を組織し、業界全体を規制すべく自販機産業ユニオンを昨年3月に立ち上げ、昨年12月にはコカコーラ系のベンダー2社(いずれもシグマグループ)を新たに組織した。

 

 シグマグループでは、公然化直後から役職者からの組合いじめ、懐柔、不誠実団交などの不当労働行為が相次いだ。
 先陣を切ったジャパンビバレッジと大蔵屋商事では残業時間の大幅削減、休憩時間取得などの労基法遵守の成果を得ているが、「8時間労働で生活できる賃金」を実現するために賃上げや固定残業代廃止などの要求に対する使用者の頑なな態度は変わっていない。

 

 こうした状況下で私たちは3月13日、「8時間労働で生活できる賃金を」「不当労働行為をやめろ」をスローガンに4社統一ストライキをたたかった。
 シグマグループの不当労働行為は、それでも収まらず、激しさを増した。

 

 新型コロナ感染拡大を受け私たちの行動力が落ちていると察した会社は、今年6月からはこれまで数年間にわたってトラックで飲料を配送してきた組合員4名を倉庫業務に不当配転した。

 月収が4~5万円減となる兵糧攻めだ。

 背景にはコカ・コーラ主導で行われている「分業による労働時間削減」がある。

 

 これに対し、私たちはコカ・コーラボトラーズジャパンベンディング社とシグマグループ2社の3社を相手に東京都労働委員会に不当労働行為救済申し立て、6月22日には不当配転の無効と未払い残業代の支払いを求める裁判を起こした。

 

 不当労働行為は激しく続くが、業界全体をみれば、いまが運動を前進させる好機である。
 コロナが自販機全体の売上を激減させ、業界が自販機台数削減の方向に舵を切り始めているからだ。この動きを捉え、闘いを進めていく。

 

池田 一慶(総合サポートユニオン執行委員)

 

保険募集人 〉RKコンサル裁判 和解かちとり終結

 2017年1月から、3年3ヵ月にわたって、団交から裁判闘争を行ってきたユニオン北九州RKコンサルティング分会のたたかいが、本年4月30日最終的な和解解決を福岡地方裁判所小倉支部で行い終結した。

 

 「保険募集人」労働者は、2014年、金融庁の保険業界への監督指針の改定によって社員化され、保険代理店は保険募集人である社員の労働者を社会保険に加入するなど、労働者として扱うことになった。
 しかし、実際には最低賃金を払わない、さらに歩合給から最低賃金を引き去る、残業代を払わない、お客情報を高い金額で買わせる、自分のお客である契約者を代理店を辞めるときに全部取られる、などの矛盾が続出した。

 

 分会は、会社と団体交渉を行い、給与が何カ月もゼロが続く状態の改善を求めた。

 しかし会社はこれらの改善に応じず、裁判闘争にならざるをえなかった。

 

 全国でも同様の問題が起こり、各代理店を相手に多くの募集人が裁判に立ち上がった。

 弁護士の全国連絡会議も作られる中でメディアも注目するところとなった。

 分会のMさんは、「この和解を勝ち取ることで、一つの人生の節目となりました」と語る。

 

 保険業界は、全体としての人口減によるパイの減少で過当競争に入り、また格差拡大の中で労働者が生命保険のみならず自動車の損害保険にも入れないという厳しい市場縮小の局面にある。

 大手Nグループと金融庁の策動として全国的な代理店つぶしとして「社員化」をしたという噂もある。

 

 いずれにせよ過当競争の中で苦しんでいくのは保険募集人労働者である。

 Mさんは最後に「僕は保険の仕事から引きます」と人生をやりなおそうとする決意でほほ笑んだ。

 ごくろうさまでした。保険募集人たちの苦労はまだまだ続く。

 

本村 真(ユニオン北九州)

 

JAL争議 〉株主総会で解決迫る 現職の減給補填も要求

 緊急事態宣言を受け自粛していたJAL争議だが、6月から行動を再開した。
 6月19日には8時半から品川のJAL株主総会会場前で宣伝行動を行った。

 あいにくの土砂降りだったが約70名が結集、入場する株主に訴えた。

 

 総会には約400名の株主が参加。役員よりコロナ禍による大幅収入減ではあるが、資金調達は十分できているとの報告がされ、乗員飲酒問題と不当解雇問題について異例の説明が行われた。

 

 質疑応答では、株主2名から、株主に無配当、支援を受ける立場で、過去1万6千名のリストラをし、社員の減給をしておきながら役員の多額の報酬(12人で4億3500万円、1人平均3625万円)は納得いかないと動議が出されたが否決。

 

 不当解雇争議についてはJAL客室争議団2名が指名され争議解決に向けての発言を行ったが、赤坂社長他役員は、「争議は裁判で決着がついている。しかし、一部労働組合から要求が出されているので話し合いは継続しているが、金銭は支払わない、再雇用での応募の機会は提供する」との発言にとどまった。

 

 さらなる継続審議を求め動議も出されたが、否決され審議終了としようとしたため、会場からは抗議の声が続出、客室乗務員争議団6名が壇上の社長に詰め寄り抗議を行おうとするなど騒然となったが、警備に阻まれ閉会となった。

 

 JAL本社前アピール行動、都内6ヵ所一斉宣伝や横浜駅宣伝も再開した。

 コロナ禍の状況の中で、運航が激減しているが、JAL経営は「雇用は守る」と言っているが、職場では不安が渦巻いている。

 10年前の経営破綻時に「解雇はしない」と明言したにも拘わらず、労働組合からの解雇回避策を検討もせず、165名のパイロットと客室乗務員を整理解雇したからだ。

 また、出来高払い賃金の割合が多い乗務員は、大幅な賃金ダウンとなっている。

 

 雇用不安なく一致団結してコロナ禍を乗り越えるためにも今こそこの解雇争議を解決すべき、低下した労働条件は経営が責任もって補填すべきなどと各所で訴えている。

 

鈴木 圭子(JAL不当解雇撤回争議団)

 

女川原発 〉再稼働仙台地裁が不当決定 住民同意めぐる攻防に

 石巻市民が宮城県と石巻市を相手取った「女川原発2号機再稼働同意差し止め仮処分」は、避難計画の実効性を焦点に仙台地裁で争われてきた。

 宮城県と石巻市は、地元同意と避難計画は関係なく、訴え自体が失当だとして、住民側の主張への認否を拒否、棄却を求めてきた。

 

 一方、市民側は、「避難計画」作成過程の文書「情報公開請求」(49回実施)を国、宮城県、石巻市などに行い、その資料にもとづき、「実効性」が欠如して
いることを一つ一つ明らかにしてきた。

 

 県と市が全く反論しないなか、審尋は、昨年12月から6回にわたり開廷され6月16日結審した。

 

 7月6日、仙台地裁は、避難計画の実効性に全く言及せず「避難計画の不備を言うだけで、人格権が侵害される具体的危険性を明らかにしていない」として請求を却下した。

 市民側は即時抗告して争うことにしている。

 

 この訴訟を横目に、内閣府は、3月25日女川地域原子力防災協議会で「女川地域の緊急時対応」(避難計画含む)を「確認」し、6月22日総理大臣が議長の原子力防災会議で「了承」した。

 これで「避難計画」が国から「お墨付き」をもらったとして宮城県は、8月1日から県内7ヵ所(立地自治体と一部のUPZ自治体)で「住民説明会」を開くとしている。

 

 説明は、全て国と東北電力(宮城県はしない)が行うことにしており、県民から批判が噴出している。

 また、宮城県が設置した専門家を集めた「安全性検討会」も7月29日に最後の検討会を開催し「まとめ」を公表するとしている。

 

 一方、立地自治体(石巻市、女川町)の議会に対し、町民や市民団体による「同
意をしないことを求める請願書」が提出され、現在、それぞれの市、町議会で審議がされている。

 再稼働推進の「陳情書」も提出されており、現地での同意を巡る攻防が続いている。

 

 宮城県知事は、「安全性検討会」や県内の首長、住民説明会で県民の意見を聞き、議会で審議してもらい総合的に判断すると言っている。

 

 住民説明会で民意ははかれない。「再稼働は県民の民意で決める!」ことを求める。

 あらゆる手段で再稼働阻止の取り組みを進めていく。

 

日野 正美(女川原発の避難計画を考える会)

 

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